「前提としてチームにメリットがあるからでしたが、ケガで少し離れたくらいで外してはいけない器だったので。こっちも覚悟を決めていました」

　守備時の細かいポジショニング、ラインコントロールについては映像を見せながらコーチ陣と個人指導もした。そのたびに素直に聞き入れて、吸収していった。それでも、ロシア・ワールドカップでリーグが中断している期間に走力トレーニングを課したときだけは違った。ほとんどのメンバーが設定タイムをクリアするなか、板倉はまともに走れず、グラウンドで半べそをかいて「川崎ではこんなに走ったことがない」と弱音を漏らした。このときばかりは、仙台の練習場で昼間から叱責した。

『これまでは関係ない。ここは仙台だ。元川崎の中野も走っているだろ。試合に出ている以上、お前が走らないとほかの選手たちにも示しがつかない。あきらめるな。走れるようにトライしろ』

2018年の滉は、そういう階段を上り始めたところでした

トーレスと競り合う板倉　©JIJI PRESS

　体力不足を指摘したのではない。むしろ、主力としての自覚を促したかったのだ。どのような練習でも、全力で取り組む姿勢を見せるのは言わずもがなだ。

「試合に出る責任をあらためて感じたはずです。プロは自分が出たいから出るだけではない。応援してくれる人、チームメイトにも示さないといけない。'18年の滉は、そういう階段を上り始めたところでした」

＜つづく＞