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「ラーメン屋はJリーガーよりも難しい」プロ19年・盛田剛平(47歳)が家族に内緒で始めた第二の人生「正直、赤字」でも、なぜ笑顔? 

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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photograph byYuki Suenaga

posted2024/02/02 11:00

「ラーメン屋はJリーガーよりも難しい」プロ19年・盛田剛平(47歳)が家族に内緒で始めた第二の人生「正直、赤字」でも、なぜ笑顔?<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

2023年3月にラーメン屋「盛田軒」をオープンした盛田剛平さん(47歳)

 プロとして軌道に乗り始めた頃、ちょっとした転機も訪れた。

 2006年にJリーグキャリアサポートセンターのインターンシップ制度を利用し、都内の「谷やんラーメン」で実際に厨房に立つ機会があった。大学時代から全国のラーメン屋を食べ歩くのが趣味で、選手時代も年間100店ほどのペースで食していた盛田にとって、調理に関心を持つのは必然的な流れでもあった。

「もともとはそんなにラーメン好きではなかったんです。それが大学生の頃から食べ歩きをはじめて、熊本旅行の際に『熊本ラーメン黒亭』さんに行って、あまりの美味さにどっぷりその魅力にハマっていった。巣鴨の『千石自慢らーめん本店(※現在は閉店)』も、背脂の甘味をずっと感じられ、大好きで何度行ったか分からないほど。基本的に1人で店に行き、誰にも気兼ねなく大好きなラーメンを楽しむような人間です。Jリーグのインターンシップは、将来的にラーメン店を、と考える契機になりましたね」

 その後はラーメン好きが高じて、試合会場やファン感謝祭などで自身が監修したラーメンを出品することもあった。この頃から、時折、自身でラーメンを調理していたが「あれだけラーメンを食べてきたのに、いざ自分で作るとまずかったんですよね」と、そう簡単ではないことを思い知る。それでも、いつか自身の満足するラーメン屋を開きたい、という思いを次第に強めていった。

アスリートがそんなにラーメン食べていいの?

 ジャンクフードと捉えられがちなラーメンだが、現役時代の食生活でも盛田流のこだわりがあったという。

「一般的にアスリートがそんなラーメンばかり食べていていいのか、と思われるかもしれません。ただ、私はこれを食べなきゃ駄目とか、こんなプレーができなきゃ駄目とか、自分にストレスになるのがダメで、逆にそういう縛りは何も設けない方がいいという性格。自分が食べたいなと思ったものが、体が今欲してるものだと。僕にとって、ラーメンは健康食でした(笑)。そういう食生活なども含めて、あえて“こだわらない”ことにはこだわってきたつもりです」

 7クラブ、Jリーグ通算300試合も出場した現役生活を振り返り、「19年間やってきて、後悔しかない。後悔しかないんですが、よくやったな、とも思います。それでも、引退したあとの人生のほうが長い。すぐに切り替えられました」と盛田は語る。

【次ページ】 「家族にはこっそり…」「絶対失敗できない」

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