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「えっ、マジで?」あっけない幕切れでも…那須川天心はボクシング3戦目でどう進化した?「棄権がなくてもTKO勝ちは時間の問題だった」

posted2024/01/25 17:00

 
「えっ、マジで?」あっけない幕切れでも…那須川天心はボクシング3戦目でどう進化した?「棄権がなくてもTKO勝ちは時間の問題だった」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

ルイス・ロブレスの棄権に残念そうな苦笑いを浮かべる那須川天心。とはいえ、3ラウンドという短い時間でボクサーとしての進化を示した

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Hiroaki Yamaguchi

 キックボクシングで“神童”と言われた那須川天心(帝拳)が1月23日、エディオンアリーナ大阪第1競技場でボクシング転向第3戦に臨み、バンタム級世界ランキング14位のルイス・ロブレス(メキシコ)に3回終了TKO勝ち。待望の初KO勝ちを飾った。

那須川天心の覚悟「もう“KOする詐欺”はしない」

 あっけない幕切れだった。

 那須川有利で進んでいた試合は3回が終わり、いよいよノックアウトシーンが見られるのではないかと期待が高まっていた。ところが3回が終わったインターバルで、ロブレスのセコンドが主審に首を振る。レフェリーが両手を交差して試合終了。「えっ、マジで?」と声に出した那須川は、それでも初のKO勝利に納得の表情を浮かべた。

 試合中にロブレスが足首を痛めて、試合続行不可能になったというのが真相。アクシデントによる幕切れながら、試合後に記者会見した那須川は「ここからというときに終わった。最終的に相手の気持ちを折ったな、というのが自分の中の印象です」と満足げに試合を総括した。決して強がりではなく、その言葉には説得力があった。

 これまでの2試合はいずれも判定勝ちだった。初戦の相手が日本ランカー、2試合目がメキシコ王者という肩書きを考えれば、大差の判定勝ちはまったく「文句なし」だ。それでも判定勝利を許してくれないファンからは「パンチがない」「攻撃的でない」という声が挙がっていた。

 外野の声は「基本的に気にしない」という那須川だが、今回ばかりは「見てろよ」の気持ちは抑えようがなかった。「もう“KOする詐欺”はしない」。試合前、そう口にするときは冗談めかしていながらも、自身初の世界ランカー戦に向けて、並々ならぬ覚悟を内に秘めていたのである。

 今回のテーマは「プレスをかける」だった。これまでの那須川は持ち前のスピード、反応の良さをいかして、「相手のパンチをもらわない」というスタイルが前面に押し出されていた。攻撃で光ったのはカウンターだ。本人曰く「前回までは打って外して、打って外して、という感じ」。これだと負けはしないが、倒すのは難しい。自分から仕掛けて試合を作り、相手にプレッシャーをかける術を身につけることが、4カ月間で取り組んだミッションだった。

「これは相当必死に練習したな」と感じさせたのは試合2週間前の公開練習だった。公開練習といえば、撮影用に軽く流すのが近年の主流となる中、那須川はメキシコ人パートナーと4ラウンド、“ガチンコ”の実戦練習を披露。グイグイと相手に圧力をかけ、バンバンとパンチを打ち込む姿はこれまでにないものだった。

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