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「えっ、マジで?」あっけない幕切れでも…那須川天心はボクシング3戦目でどう進化した?「棄権がなくてもTKO勝ちは時間の問題だった」 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2024/01/25 17:00

「えっ、マジで?」あっけない幕切れでも…那須川天心はボクシング3戦目でどう進化した?「棄権がなくてもTKO勝ちは時間の問題だった」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

ルイス・ロブレスの棄権に残念そうな苦笑いを浮かべる那須川天心。とはいえ、3ラウンドという短い時間でボクサーとしての進化を示した

「今回の試合でもっとボクシングが好きになった」

 那須川はKOがボクシングのすべてだと考えてはいない。ただ、KOするところを見せておけば、相手は警戒するし、警戒することによってボクシングも変わってくる。やはり3戦目でのTKO勝ちは、完全燃焼ではなかったとはいえ、大きな意味があったと言えるだろう。わずか1年足らず前に「シューズを履いて戦うことにようやく慣れてきた」と話していたボクサーがここまで成長するのは素直に驚きだ。

 さらに今回はキャリア最軽量となる54.8キロで試合をしたことにも触れておきたい。このウエートで問題ないことが確認され、那須川は今後、スーパーバンタム級ではなく、バンタム級で世界を目指すことが決定的となった。試合の翌日、本田明彦会長は「次の試合は初の10回戦。ウエートも54.8より軽いか、53.5キロ(バンタム級リミット)でやる可能性もある」と見通しを示した。

 那須川は次々とハードルをクリアし、今が楽しくてしょうがないといった様子だ。試合翌日の会見では、「今回の試合でもっとボクシングが好きになった。今後も強くなることだけを考えて生きていきたい」とまで口にした。

 本田会長によると、会場をおさえるのが最大のネックとなり、現時点で那須川の次戦は決まっていない。それでも6月か、7月か、「試合に勝る経験値はない」という那須川の希望を叶えるなら、その前に後楽園ホールでの試合や、場合によっては海外のリングなど、あらゆる選択肢が検討されることになるという。

 那須川が2024年、何試合リングに上がれるかは分からないが、本人はさらに自らの成長が期待できる試合を望んでいる。

「僕はベルトも持ってないので、日本でも東洋でも他のベルトでもいいので何かにチャレンジしたいというのはありますね。まず形として残さないと、強いやつとやってないのに挑戦してどうなのかなというのはあるので」

 タイトルマッチはたとえ地域王座であっても、選手のモチベーションがノンタイトル戦とは別次元だ。2024年の那須川天心にさらなる期待が高まった。

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