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《山本由伸2世》補強ポイントは野手にもかかわらず、カープが19歳右腕・日高暖己を人的補償で獲得した背景 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2024/01/15 11:00

《山本由伸2世》補強ポイントは野手にもかかわらず、カープが19歳右腕・日高暖己を人的補償で獲得した背景<Number Web> photograph by JIJI PRESS

1月11日の入団会見でポーズをとる日高。背番号は70に決まった

 そういった傾向からか、丸佳浩が巨人へ移籍した18年オフは若手が多くプロテクトされ、高額年俸の選手が外れていた。また、過去2件とはチーム事情が違い、リーグ3連覇を成し遂げた黄金期にあった。4連覇を目指すためにも方針転換。人的補償選手では野手最高額に並ぶ当時年俸1億9000万円(推定)であっても、実績と人柄を兼ね備えた長野久義を指名したのだった。

 赤松は広いマツダスタジアムでセンターのレギュラーポジションを奪い、16年には代走や守備固めなどで25年ぶり優勝に貢献。現役引退後は二軍外野守備走塁コーチをへて、昨季から一軍担当となった。一岡は移籍1年目から登板数を31試合と増やし、防御率0点台の安定感でブレーク。勝ちパターンの一角として3連覇に貢献し、今季からアナリストとしてチームを支える。長野は巨人時代のような成績は残せなかったものの、助言や献身を惜しまぬ振る舞いでチームに大きな影響を与えた。

 そして今回の西川の移籍に伴いオリックスから提出されたリストから広島が選んだのは、当時の赤松や一岡よりも若い、人的補償選手最年少タイとなる19歳だった(高卒2年目での人的補償による移籍は14年オフに巨人からヤクルトへ移籍した奥村展征以来)。

野手でなく投手を獲得した理由

 今オフの野手の補強は、2選手が入れ替わった外国人選手をのぞけば、ドラフト4位で獲得した沖縄尚学高の仲田侑仁のみ。チーム編成上、右打ちの野手は補強ポイントだったが、チーム方針と現場の意向をすりあわせ、方向性を投手に定めた。

「監督は基本的には現有戦力の底上げを考えている。野手が抜けたけど、若い選手を伸ばしたいというのが監督の考え」

 鈴木清明球団本部長の説明からも、新井監督の芯の強さが感じられる。ドラフトでも野手の獲得を強く求めることはなかったと聞く。野手の育成には特に時間がかかると覚悟する新井監督だからこそ、若手に与えられる出場機会と競争意識が損なわれることを避けたい思いがあったに違いない。そして球団も理解を示した。

【次ページ】 台頭が望まれる次世代の中核

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