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「台湾・韓国チアリーダー大盛り上がり、日本の即席応援団もオーストラリアを…」“井端ジャパンだけじゃない”劇的アジアCSを現地で見た 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byGene Wang/Getty Images

posted2023/11/21 11:00

「台湾・韓国チアリーダー大盛り上がり、日本の即席応援団もオーストラリアを…」“井端ジャパンだけじゃない”劇的アジアCSを現地で見た<Number Web> photograph by Gene Wang/Getty Images

井端弘和監督の下でアジア制覇を成し遂げた若き侍ジャパン。ただしライバル国も進境が著しそうだ

 3位決定戦は台湾対オーストラリア。今大会で唯一、応援団がなかったオーストラリアは前日、X(旧ツイッター)上で「親愛なる日本の野球ファンの皆さん! 私たちは皆さんの応援歌と手拍子が必要です」と呼びかけた。果たして11時からの3位決定戦では、SNSに反応した日本人による即席のオーストラリア応援団ができていた。最初は数人が声をあげていただけだったが、どんどん人が増えて、自前の応援団を擁する台湾に負けない勢いになった。

 NPBの応援歌で選手名だけをオーストラリア選手に代えるパターン。4回、かつての阪神、バースの応援歌を借りて「バークかっ飛ばせバーク、ライトーへレフトへホームラン」の応援歌を受けてクリストファー・バークがタイムリーを打ったあたりからチームも乗ってきだした。「お前が打たなきゃ誰が打つ」は理解できなかっただろうが、0-3から3点を盛り返して同点にしたのは、即席応援団の力も大きかったはずだ。

 WBCでも活躍した長身右腕コーエン・ウィンが、5イニングにまたがるロングリリーフで台湾に追随を許さなかったが、最終回ついに力尽き3-4でサヨナラ負け。しかし日本の即席応援団は、健闘したオーストラリアチームに惜しみない拍手を送っていた。

決勝戦では韓国投手陣に日本打線は苦しんだ

 18時からの決勝戦。予選でも日本は2対1と最少得点差で韓国を下しているが、この試合も大接戦となった。

 今大会初登場の西武の今井達也だが、3回、先頭の金慧成を歩かせて、次打者の金倒永が送った。バントの打球を一塁の牧がファンブルして、送球が遅れたことで両者を活かしてしまう。これを4番盧施煥が二塁打で返して韓国が2点先制。

 恐らくは責任を感じていたであろう牧が5回、左中間に本塁打、さらに6回には万波の二塁打を足掛かりに佐藤輝明の犠飛で同点。ここから膠着状態になった。

 従来の韓国は先発投手が好投しても、2番手以降の投手が落ちるので、日本には打ち込まれることが多かった。しかし先発の郭斌だけでなく、3番手の崔俊鏞、4番手の崔智旻も無失点、日本に付け入るスキを与えない。このあたりに韓国投手の進化を感じた。

今年最後の「真剣勝負」は劇的な幕切れだった

 9回を終わって2対2、10回からは無死一、二塁からスタートするタイブレークになる。

 日本の5番手ヤクルトの吉村貢司郎は先頭の金倒永を併殺打に切って取るも、尹橦熙に中前に運ばれ1点が入る。さらに盧施煥にも安打を打たれたが、ここは抑えて1点差で10回裏に。

 韓国投手、鄭海英は何度も深いため息をつく。森下翔太の代打、西武の古賀悠斗がすかさず送って1死二、三塁。ここで牧は敬遠されるも坂倉将吾が犠飛でまず同点に。さらに万波を敬遠したが、門脇が2球目を左前に運んでサヨナラ勝ち。

 今年最後のプロ野球の「真剣勝負」は劇的な幕切れとなった。

 敗れた韓国も本当に素晴らしかった。井端監督の、篤実さがにじみ出ている朴訥なインタビューを聞きながら球場を後にした。

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