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“天才・宇佐美貴史”に小、中学校で気遅れした男が“スペイン語のプロ”として同僚に…「選ばれた者しか入れない」Jリーグで通訳になるまで

posted2023/08/11 11:00

 
“天才・宇佐美貴史”に小、中学校で気遅れした男が“スペイン語のプロ”として同僚に…「選ばれた者しか入れない」Jリーグで通訳になるまで<Number Web> photograph by Masaki Shimozono

かつてJリーガーを目指し、現在ではガンバ大阪のスペイン語通訳として奮闘する岡井孝憲さん

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下薗昌記

下薗昌記Masaki Shimozono

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 クラブ史上初となるスペイン人指揮官、ダニエル・ポヤトス監督を招聘し、新たなスタイルの構築を目指しているガンバ大阪。一時は最下位に転落も、5月28日のアルビレックス新潟戦以降のリーグ戦は6勝1分という「V字回復」でリーグ戦の中断期間を迎えている。そんなガンバ大阪で奮闘する一人の通訳がいる。「プラチナ世代」の1学年下で、自身も京都サンガのアカデミーで活躍した岡井孝憲さんだ。宇佐美貴史とのマッチアップ歴も持つ岡井さんに、サッカー人生やスペインサッカー観を聞いた《全2回の1回目/#2につづく》。

 徳島ヴォルティス時代からダニエル・ポヤトス監督の通訳兼アシスタントコーチを務め、今年1月にガンバ大阪の通訳に就任した岡井さん。宇佐美貴史との「再会」の会話が、かつて逸材だったことを物語る。

宇佐美「あれ、こいつ顔見たことがあるな」

 一学年上に当たる宇佐美は「顔は分かっていましたよ。徳島の時に『あれ、こいつ顔見たことがあるな』って。サンガというよりはその前の紫光(クラブ)のイメージが強かったですけど」と小学生時代の岡井さんを覚えていた。

「遠い存在だった宇佐美くんに、彼が育ったガンバ大阪でこういった立場で巡り合うことが出来て、すごく夢のようであり、すごく光栄に思った瞬間でしたね。しかも覚えていてくれました。『宇佐美くん』って声をかけたら、『お前、紫光の奴やんな』みたいな感じで声をかけてくれて、会話をし始めて『覚えてますか』と聞いたら、『名前は覚えてなかったけど、存在は覚えてるよ』と言ってくれました」

 岡井さんは京都の少年サッカーで名門として知られる京都紫光サッカークラブ出身。2005年には全日本少年サッカー大会京都府大会の決勝で長岡京SSと対戦し、岡井さんの放ったシュートからオウンゴールを誘発。前年まで宇佐美がいた長岡京SSを下し、18年ぶりに全国大会に出場。岡井さん自身も栄えある京都府のベストイレブンに選ばれている。

「宇佐美くんと最初に対戦したのは小学校の時ですね。宇佐美くんは絶対知ってるんですけど、園部陸上競技場でやった全日の予選でよくある長岡京時代の宇佐美くんがピッチをドリブルで爆走している試合の映像がテレビで流れたことがあって、僕はそこの端っこに映っています(笑)。小学校の時からずば抜けていましたね」

練習中は「タカシ」、ピッチ外では「宇佐美くん」

 京都サンガのU-15に合格し、京都の育成年代ではエリートコースを歩んでいた岡井さん。その履歴書の豪華さを物語るのは2006年のナショナルトレセン関西のメンバー入りだ。関西の精鋭32人の中に中学1年で選出された岡井さんだが、中学2年の顔ぶれには宇佐美や大森晃太郎、小川慶治朗、杉本健勇、宮吉拓実ら1992年生まれの「プラチナ世代」が揃っていた。

【次ページ】 大学で出場機会を得られず、選んだのはスペインだった

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