17歳ダルビッシュを完全に攻略…なぜ木内幸男は“試合前のダルビッシュ発言”で有利を確信したのか？ 常総学院が制した“20年前の甲子園決勝”

　2003年夏。日本一を花道に常総学院の監督を勇退した木内幸男が、甲子園の後日談として漏らしていたことがあるのだと、記者の間でちょっとした噂になったことがあった。

　真壁が先発していたら、負けていた――。

　それは、決勝の相手である東北の右のサイドスローピッチャー、真壁賢守を指していた。後年、本人に尋ねてみると「いろんなところで聞きました」と言っていたくらいだから、信憑性は高いのだろうと思っていた。

2003年夏の甲子園、常総学院を優勝に導いた木内幸男監督 ©JIJI PRESS

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「真壁なら負けていた」の真意

　さらにその後、木内に話を聞く機会があり、ここぞとばかりに確かめた。すると「そうっすね」と頷き、噂の真相を語り出した。

「嫌だった。あのサイドスロー（真壁）と左（采尾浩二）はそう打てませんよ。いいピッチャーだってのは前から思ってましたから。これが先発でこられっとどうしようもない。ふたりで6回まで放られたら点取れねぇと思ってたんですよ。7回からダルビッシュが『俺に任せろ』って出てきたら全力で投げてくるからなおさら打てねぇ。そうされたら1対2とか1対3で敗けると思ってましたから」

　優勝から逆算し、投手起用などトーナメントの勝ち上がりを綿密に練る木内にとって、準決勝からその戦いはすでに始まっていた。

　第1試合で東北が采尾と真壁の継投で江の川を6-1で退けたことで、このふたりをより警戒するようになっていた。そして、第2試合で常総学院が桐生第一に勝利すると、木内の頭脳はすぐさま「対東北」モードとなった。

決勝前日、ダルビッシュの発言

　ちょっとした綻び。2度の日本一を経験する名将は、そこを見逃さなかった。

「決勝の前の日に、ダルビッシュが“明日は僕が先発して完投します”なんて言うんですよ、うんうん。『しめた！』と思いましたよ」

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