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青木宣親の記憶「なぜあのときアメリカで“危険な死球”を受けたか?」メジャー経験者3人が語る、プロ野球との“決定的な差”「アメリカは曲がる」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/07/28 17:06

青木宣親の記憶「なぜあのときアメリカで“危険な死球”を受けたか?」メジャー経験者3人が語る、プロ野球との“決定的な差”「アメリカは曲がる」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

メジャーリーグ計7球団で活躍した青木宣親。2014年ロイヤルズ在籍時にワールドシリーズ出場を果たした。2018年にヤクルト復帰

「ひと回りとまではいいませんが、メジャーのボールは日本よりも大きい感触がありました。日本とは革の質も違いますし、糸の高さはよく言われると思いますが、それに加えて糸自体も太かったと思います。それに糸を通す糸穴も大きかったんじゃないですかね。そうした諸々の条件が重なった結果として空気抵抗が大きくなり、より変化球の曲がりが大きくなったんじゃないか――というのを僕の意見として聞いていただけたらと思います」

 この原稿を書くにあたり、ドジャースでクローザーを務めていた時代の投球の映像を見てみたが、スライダーの曲がりがエグい。

 これは、いまで言うなら「スイーパー」だ。

 齋藤隆がメジャーに挑戦したのは36歳の時だった。ベイスターズで思ったような結果が残せず悶々としていたが、移籍先のドジャースで再生できたのは、日本以上にスライダーが曲がったからだ。

 齋藤隆は選手生活の後半になって、“魔球”を手に入れたのだった。アメリカでプレーしたいという強い思いが”ペイオフ“、大きな見返りを生んだということだ。

【3】黒田博樹の証言「とんでもない形のボールもあった」

 そしてもうひとり、「団結力」特集では、黒田博樹氏にも話を聞いた。やはり、黒田氏も「変化はしやすいと思います」と語る。

「影響しているのは、ボールの形状でしょうね。プレーボールがかかって、いきなりとんでもない形をしているボールが渡されたこともありましたよ(笑)。必ずしもボールの質が均一ではないので、神経質な人はすごく気になるかもしれません。本当に言い出したらキリがないほどなので、僕としては『そういうもの』と捉えて、あまり気にしすぎないようにしてました」

 メジャーリーグ時代、黒田氏の投球の組み立てはツーシームなど、打者の手元で動くボールが中心となっていた。

「僕はボールを動かして、相手打者のバットの芯を外すというタイプのピッチャーだったので、逆にボールが変形しているくらいの方がいいかなと思ってました。ただし怖いのは、自分がイメージしているのとは逆に曲がることもあるということなんです」

 曲がればいいというわけではないんですよ――黒田氏はそう話す。

「もうひとつの問題点として、曲がるのが早すぎることも起こり得るわけです。ピッチャーからすると、早めに曲がり始めるとバッターに見極められやすくなるので、それを嫌がる人もいます。近くで大きく曲がるのがいちばんいいわけで。つまるところ、どんなボールが手元に来たとしても、アメリカでいう”command“、どれだけ自分の思い通りに制球するかが勝負になると思います」

もし山本由伸、佐々木朗希が投げたら…どれくらい曲がる?

 青木は6年、齋藤コーチ、黒田氏はそれぞれ7年という長期間メジャーで活躍してきた先人たちが、これだけ「メジャーのボールは曲がる」と話すのだ。同じ野球といえども、日本とアメリカではアジャストメントする要素が違うわけだ。

 近い将来にメジャーリーグ移籍が予想される投手たちは、アメリカで魔球を手にする可能性もあるし、コマンドが利かなくなることも考えられる。

【次ページ】 もし山本由伸、佐々木朗希が投げたら…どれくらい曲がる?

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