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「俺は腹をくくったよ」総工費40億円を自前で調達! 岡田武史が語る今治里山スタジアム建設秘話「FC今治は単なるJクラブではない」

posted2023/07/23 17:00

 
「俺は腹をくくったよ」総工費40億円を自前で調達! 岡田武史が語る今治里山スタジアム建設秘話「FC今治は単なるJクラブではない」<Number Web> photograph by Toshio Ninomiya

今治里山スタジアムでインタビューに応じたFC今治会長の岡田武史(66歳)。建設費40億円をいかにして自前で調達したのか

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Toshio Ninomiya

 今年1月に完成した今治里山スタジアム。自前で建設費40億を調達するという高いハードルをFC今治会長の岡田武史はいかにしてクリアしたのか。スタジアム建設に込めた想いと”単なるJクラブではない”FC今治の理念を明かした。<NumberWebインタビュー全2回の前編/後編は#2へ>

FC今治会長・岡田武史が語るスタジアムへの想い

 試合前に音を立てていた局地的な豪雨は、いつしかその勢いを弱めていた。

 7月8日、勝ち点26で並ぶJ3上位同士となるFC今治とアスルクラロ沼津の一戦。インテンシティとテンションの高い今治が序盤から攻勢に出ながらもゴールを奪えず、それでも後半に入ってセットプレーで先制点を挙げる。一方、丁寧につなぐスタイルを貫徹する沼津は終盤に追い上げて残りわずかで同点に追いつき、立て続けに相手ゴールを襲う。手に汗握る白熱した攻防が、観ている者の関心をピッチ内に引きつけていた。

 降り続く雨が気にならなくなったのは、今治里山スタジアムの雰囲気も無関係ではなかったはずだ。ピッチからスタンドまでがとにかく近く、選手たちの息遣い、監督、コーチの指示が聞こえてくる。スタンドに組み込まれる“イングランド仕様”のベンチにも、自然と視線が行く。沼津を率いる中山雅史監督が静かに戦況を見守る様子もいちいち視認できた。同点に追いついたときは一転、ゴンゴールばりに喜びを爆発させた。

 結局は1-1の痛み分け。FC今治の岡田武史会長は勝っていれば暫定とはいえJ2自動昇格圏の2位となっていただけに硬い表情のままスタジアムから出てきた。負けず嫌いは、現場を離れてからも何ら変わっていない。フランスワールドカップから25年、指揮官とストライカーが立場を変えて対峙したことに時代の流れを感じるとともに、岡田がこだわって建てたスタジアムで“熱い戦い”が繰り広げられたことに何とも言えない心地良さがあった。

 試合翌日、雨は止んだ。曇天に目をやった岡田はふと、ため息をついた。

「スタジアムから見える景色って普通、特に何かあるってわけじゃないでしょ? ちょっと見てみてよ。絶景なんだから。町が見渡せて、海が見える。天気が良い日だったら、本当に最高なんだけどな」

 インタビュー場所となったスタジアム3階にあるスイートルームは14室あるうち、12室を年間契約で貸し出している。広いメディアルームを含めてスタジアムの部分開放は事業収入の側面は当然あるものの、共用の観点が先にあってのことだ。

スタジアム建設費40億円を自前で調達

 今年1月に完成したばかりの真新しいスタジアムは緑のなかに悠然と建っている。

 これまでは同じ敷地内の高台につくったスタジアムを使用していたものの、収容人数、設備などJ2規格ではなく、拡張も現実的ではなかったために“もう一つのスタジアム構想”を走らせた。

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