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[結実した自主野球]奇跡を生む、早実式指導術

posted2023/07/22 09:00

 
[結実した自主野球]奇跡を生む、早実式指導術<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Hideki Sugiyama

なぜ彼らはゼロから作り上げた自分たちの野球で、頂への階段を駆け上がることができたのか。30年以上も監督を務める和泉実と、早実の長い歴史の中でも燦然と輝く2つの世代にその内実を訊いた。

「俺は、甲子園には連れていけないよ」

 加藤雅樹の記憶によれば、早稲田実業の監督、和泉実にそう言われたのは2013年秋のことだという。身長180cmを超える左のスラッガーだった加藤は、新チームが発足したその時期、1年生ながら4番を任されていた。

「早実には、ある程度、メソッドのようなものがあると思っていたんです。和泉さんの言うことを聞いていれば甲子園行けんじゃないかって。なので、そう言われてショックだった。でも、僕らで何とかしなきゃいけないんだなって思いましたね。早実は、これまでも選手たちが作り上げたもので(甲子園に)行ったんだな、と」

 2006年夏、野球少年だった小学3年生の加藤の運命を変える出来事が起きた。

 その夏、甲子園では、アイボリーとエンジのユニフォームが強烈な輝きを放っていた。小柄なエース斎藤佑樹(元日本ハム)を擁する早実は、2回戦で優勝候補の大阪桐蔭を倒すなど破竹の勢いで勝ち進み、ついに決勝の舞台にたどり着く。そこで待っていたのは夏連覇を果たしていた駒大苫小牧だった。北の王者の背番号1は「世代最強」と称された田中将大(楽天)である。

 その決勝で、伝説が生まれた。

 両チームのスコアは、規定の延長15回を戦い終えても1-1のまま。勝負の行方は翌日の再試合にもつれ込む。再試合も斎藤と田中の投げ合いとなり、最後は早実が4-3で全国の頂点に立った。決勝までの全7試合をほぼ1人で投げ切った斎藤は試合中、青いハンドタオルで顔の汗を拭き取ったことから「ハンカチ王子」と呼ばれ、日本中に大フィーバーを巻き起こした。

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