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「いやいや、ちょっと待てよ」「頭が真っ白に」巨人・内海哲也が味わった“人的補償で西武移籍”の衝撃…気落ちする左腕を救った“ある言葉”とは

posted2023/07/12 17:03

 
「いやいや、ちょっと待てよ」「頭が真っ白に」巨人・内海哲也が味わった“人的補償で西武移籍”の衝撃…気落ちする左腕を救った“ある言葉”とは<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2018年12月21日、笑顔で西武の入団会見に臨む内海哲也。7月12日発売の著書『プライド』では“人的補償の衝撃”を赤裸々につづっている

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内海哲也

内海哲也Tetsuya Utsumi

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巨人、西武の投手として通算135勝を挙げ、2022年に現役を引退した内海哲也。巨人のエースとして6度のリーグ優勝と2度の日本一に貢献した左腕は、“人的補償”による西武への移籍をどう受け止めていたのか。7月12日に発売された著書『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』(KADOKAWA)より、一部を抜粋して紹介します。(全3回の3回目/#1#2へ)

もう、一軍で投げるのは無理かもしれない……

 結局、2015年はわずか5試合の登板で2勝1敗、防御率5.01という不甲斐ない成績に終わりました。

 2016年も同じような状態を引きずり、オープン戦では3試合で防御率10.32という成績で二軍スタートとなりました。

 プロ野球の世界で「二軍に慣れたらいけない」とよく言われるのは、やっぱり“ぬるい”部分があるからです。張り詰めた空気の一軍の戦いから遠ざかると、それに甘える自分がどこかで出てきます。

〈もう、一軍で投げるのは無理かもしれない……〉

 二軍ですごす日々が長くなると、弱気な自分がどうしても出てきました。

 このシーズンは開幕からファームで投げて、4月15日の楽天戦では4回途中4失点、続く22日の西武戦では7回4失点。二軍でも打たれる試合が続きました。

〈一軍に全然呼ばれないな。もう終わりだな……〉

 そんな心境だったから、二軍投手コーチの田畑一也さんと衝突することもありました。

 当時、ファームに身を置いていた一軍候補の先発投手は5回を投げ終えたら「もういいよ。あとは自分で調整してくれ」とお役御免になっていたのですが、僕に対してだけ「6回も行くよ」ということがありました。

「なんでですか? 僕にも調整させてくださいよ」

「いや、斎藤(雅樹)監督が『もう1回行く』って言っているから」

 僕としては5回を無失点に抑えて、気持ち的にはやり切った感覚でした。よし、もしかしたら一軍に呼ばれるかもしれないぞ、と。

 今になって振り返れば単なるわがままですが、「6回も行くぞ」と言われて続投し、気持ちの整理がつかずに3点くらい取られました。ベンチに帰ってきて「交代」と言われ、不貞腐れて田畑さんの話を聞かずにいる。みんなの前で尊大な態度を取っていたから、ロッカールームに帰った後、ものすごく怒られました。僕はそれすらも無視して聞かずにいました……。

【次ページ】 巨人晩年で一番うれしかった瞬間

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