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内田篤人のコーチ姿を見てよみがえった14年前の記憶 「U-19日本代表の仲間は本当に大切な存在」 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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posted2020/09/17 08:00

内田篤人のコーチ姿を見てよみがえった14年前の記憶 「U-19日本代表の仲間は本当に大切な存在」<Number Web> photograph by Takahito Ando

U-19日本代表合宿にロールモデルコーチとして参加した内田篤人。

14年前、鹿島と代表の狭間で揺れていた

 内田が参加したことで合宿には多くの報道陣が集まった。さまざまなメディアでその一挙手一投足が報じられたが、あくまで今回の合宿の主役は選手と影山監督、そしてチーム立ち上げから関わるスタッフ。内田の3日間の振る舞いを見ていると、AFC U-19選手権に向けて一丸となるには、選手間の競争と仲間意識、そして選手とスタッフの信頼関係が必要だということを誰よりも理解しているように思えた。

 そんな姿を見て、14年前の姿がよみがえってきた。

 2006年、吉田靖監督が率いるU-19日本代表は豪華なメンバーがそろっていた。林彰洋、槙野智章、森重真人、安田理大、柏木陽介、田中亜土夢、香川真司、梅崎司、ハーフナーマイクと錚々たる顔ぶれだ。そんな中でも、内田は高卒ルーキーながら鹿島アントラーズで開幕スタメンを勝ち取るなど、吉田ジャパンでも主軸を担っていた。

 だが、この時の内田は大きな葛藤を抱えていた。それはU-19日本代表と鹿島との両立だった。

 当時から鹿島の主力としてプレーしている手前、U-19日本代表の活動を見送る機会も増えていた。もちろん、それは選手としては名誉なことで、能力の高さを証明している。しかし、一見クールそうに見えて実は義理堅い内田は、仲間に対する愛情が深い分、その狭間で悩んでいたのだ。

「鹿島の勝利に貢献することが一番大切だし、プロとしてそれが当たり前なのも理解しています。でも、僕にとってU-19日本代表の仲間は本当に大切な存在なんです」

 吉田ジャパンは槙野、安田、柏木の3人のムードメーカーがいつもチームを明るく盛り立てていた。内田は決まって“クールな立ち位置”をとっていたが、決して一匹狼になるのではなく、その輪の中に必ず加わっていた。印象的なのが3人がチームを盛り上げているときに見せる“優しい目”だ。端っこにちょこんと立ち、笑顔を浮かべる。チームの潤滑油となる、絶妙なポジショニングだった。

「このチームのために戦いたい」

 ちょうどドイツW杯が行われていた'06年6月、U-19日本代表はタイ遠征を行い、内田も久しぶりに吉田ジャパンの活動に参加していた。U-19タイ代表との親善試合のピッチコンディションは劣悪、直前には強烈なスコールが降ったことで、田んぼのようなピッチで行われた。

 試合前、ピッチ際にひょこっと姿を現した内田は「これ勘弁してほしいな~。きつそう」と口にしたが、その表情は笑顔。90分間、泥だらけになりながら楽しそうにプレーしていた。試合中も激しいスコールに見舞われたが、内田の正確なクロスからのゴールを含めて3-1で勝利。試合後に話を聞くと、「やっぱりこのチームでプレーするのは本当に楽しい。鹿島もそうですが、『このチームのために戦いたい』と心の底から思うんです」と答えてくれたことを今でも覚えている。

「それにね、これから先の戦いはピッチコンディションどうこうとは言っていられない。(これから戦いを控える)インドはもっとピッチが悪いし、こういうグラウンドや蒸し暑い気候の中でやっていかないといけませんから。でも、ここはちょっとインドより暑いかな。いや、やっぱりインドの環境はこんなもんじゃないかな(笑)」

【次ページ】 U-20W杯出場権を獲得したサウジ戦

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内田篤人
林彰洋
槙野智章
森重真人
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柏木陽介
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梅崎司
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荒木遼太郎
斉藤光毅
成瀬竣平
松村優太
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