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体操になぜ採点があるのだろう。
漫画『ムーンランド』で考える。

posted2020/08/20 07:00

 
体操になぜ採点があるのだろう。漫画『ムーンランド』で考える。<Number Web> photograph by ©山岸菜/集英社

主人公のライバル、堂ヶ瀬朔良の平行棒の演技。体操選手たちが何をしているか、どこが難しいか、そしていかに美しいかが伝わるシーンが目白押しだ。

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松尾奈々絵(マンガナイト)

松尾奈々絵(マンガナイト)Nanae Matsuo

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 これまで体操競技は「見ていてなんかすごいけど、よくわからないもの」という印象が強かった。どうやったら高得点が出るのか、勝ち負けの基準やルールが難しそうで楽しみ方がわからなかったからだ。

 学生時代の体育の授業で、体操を採点競技として考えていなかったことも影響しているかもしれない。

 スポーツ観戦といえば野球やサッカー、バスケットボールなど球技が中心。そしてスポーツ漫画の醍醐味といえば、自分の弱点を克服してチームで協力して相手に打ち勝ち、優勝を目指すものだと思っていた。

 そんな「採点競技音痴」だった私が、「体操って面白い!」と気づいたきっかけとなったのが、「少年ジャンプ+」で2018年から連載している『ムーンランド』(山岸菜著・集英社)だ。アテネオリンピックの団体で金メダルを獲得した水鳥寿思さんが作品の監修を務めている。

 体操に詳しくない私はこの作品を読んではじめて演技の出来栄えを示す「Eスコア(Execution)」の存在や、「難度点(Difficulty Value)」との合計点によって最終得点になることを知った。読みながら「こんなこと人間にできるの……?」と作中に登場する技が見たくなり、ネットで体操動画を探し始めるようになった。

体操は自分の目標か競争か。

 物語の主人公は、「思い通りに自分の体を動かしたい」という気持ちから、マイペースに体操をしていた天原満月(通称:ミツ)。「だれかと競争するために体操やってるわけじゃない」と、大会にも出場してこなかったが、所属しているクラブの監督にエントリーされ、中学3年生で初めて大会に出場することになる。

 ミツは難易度が低い技を「完璧」にこなすことを目指していたが、「結果が全てだ」と難易度の高い技を披露する堂ヶ瀬朔良(どうがせ・さくら)と出会い、自身の体操に対する認識を見つめ直していく。

【次ページ】 なぜ体操には採点があるのだろう。

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