オリンピック4位という人生BACK NUMBER
<オリンピック4位という人生(14)>
ロンドン五輪 サッカー・徳永悠平
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byJMPA
posted2020/08/02 09:00
韓国との3位決定戦に敗れ、味方選手が倒れ込む中、ピッチを後にする徳永悠平。
山口は何かを掴んだように見えた。
《彼らには五輪で自分の能力をアピールできたという気持ちもあったと思います。ただ、メダルを取らせるためにあのチームにいた僕には悔しさしか残らなかった。どうすればよかったのか。準備不足だったのか。ピッチ状態がわかった時に韓国のように何かを変えるべきだったのか……。でも、自分たちはあのスタイルしかやってこなかった。それを貫いた結果でもあるんです》
自問自答はこの瞬間から始まった。それは36歳になり、故郷・長崎のクラブでプレーする今も続いている。
ただ、その度に答えらしきものとして浮かぶことがある。それはあの16日間で人生を変えた若者たちの顔である。
山口はあの後、世界へ羽ばたいていった。A代表に入り、海外のクラブへ移籍し、ブラジルW杯のピッチに立った。
《ロンドンが終わった後の山口は、完全に何かを掴んだように見えました。ほんとうに頼もしく、逞しく見えました》
終わりなき問いに陥るたび、その残光がいつも徳永を救い出してくれるのだ。
徳永悠平(サッカー)
1983年9月25日、長崎県生まれ。国見高を経て、早大進学。3年時にアテネ五輪代表に選出されるもグループリーグでケガをし負傷交代。'06年FC東京とプロ契約、その後A代表にも選出。'18年からV・ファーレン長崎所属。180cm、76kg。
◇ ◇ ◇
<この大会で日本は…>
【期間】2012年7月27日~8月12日
【開催地】ロンドン(イギリス)
【参加国数】204
【参加人数】10,568人(男子5,892人、女子4,676人)
【競技種目数】26競技302種目(女子ボクシングが追加)
【日本のメダル数】
金7個 村田諒太(ボクシングミドル75kg級)、松本薫(柔道57kg級) など
銀14個 女子サッカー、藤井瑞希・垣岩令佳組(バドミントン女子)など
銅17個 室伏広治(ハンマー投げ)、バレーボール女子 など
【大会概要】
開会式でエリザベス女王がジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグのエスコートで登場。男子サッカーの3位決定戦の前には韓国の李明博大統領が竹島に上陸し、物議を醸した。競泳男子4×100mメドレーリレーで銀メダルを獲得し、松田丈志の「(北島)康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」は流行語にもなった。
【この年の出来事】
石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島購入を発表。東京スカイツリーが完成。