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「鹿島の2番」へ常本佳吾の挑戦。
明治大SBの理想はラームの万能性。 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byTakahito Ando

posted2020/07/29 11:30

「鹿島の2番」へ常本佳吾の挑戦。明治大SBの理想はラームの万能性。<Number Web> photograph by Takahito Ando

来季、鹿島アントラーズへ加入が決まったDF常本佳吾。明治大では長友らが背負った「2番」を背負う。

衝撃を受けたラームの万能さ。

 常本には自分の「理想のサイドバック像」を作り上げてくれた重要な選手がいる。

「ドイツ代表のフィリップ・ラーム選手を見て、これまで持っていたサイドバックのイメージが大きく変わりました」

 ドイツ代表のキャプテンとして2014年ブラジルW杯を制し、'17年に現役を退くまで強豪バイエルン・ミュンヘンの不動の右サイドバックとして活躍。170cmと小柄だが、対人に強く、抜群のスプリント力を駆使した守備と球際の強さを見せる一方で、足元の技術と戦術眼に優れ、サイドバックながらビルドアップにも加わり、攻撃の起点となるチャンスメークをハイレベルでこなす。その能力はジョゼップ・グアルディオラ監督にも重宝され、キャリア晩年には右サイドバックだけでなく、インサイドハーフやアンカーをこなすなど、サッカーIQの高さを世に知らしめてきた。

脇役ではなく、主役として。

「小学校まではCBがメインで、右サイドバックはたまにプレーする程度。右サイドバックに固定されたのは、身長が伸びなかった中学の頃から。当時のサイドバックの印象は地味に汗をかいて、体を張る。攻撃面ではクロスを上げるという“脇役”。でもラーム選手を見て、その価値観がガラッと変わった。ビルドアップに参加して、足技で相手を翻弄することもできる。右サイドバックが完全にゲームメーカーになっているんです。

 それでいて守備面でも屈強なFWに厳しくプレスをかけてボールを奪い取れる。何でもできる姿を見て『サイドバックって決して脇役ではないんだ』と思いました。そこからはこのポジションが大好きになり、プレーしていても『主役になる』というモチベーションで楽しめるようになりました」

 自分の「天職」を意識したことで彼は大きく成長。高3になるとキャプテンにも選ばれ、チームの核を担った。しかし、マリノスへのトップ昇格は叶わなかった。

「高1からトップチームの練習に参加していたので、自分の中では『上がれる』と思っていました。でも、高3になると左足かかとに原因不明の痛みが出てきて、5月8日のプレミアリーグEAST・流通経済大柏戦を最後に公式戦は1試合も出られませんでした。その怪我が完治したのが(高3の)12月で、その間にトップ昇格はないと告げられました。痛みが出る前に一度だけ練習に参加していた明治大に進むことになったんです」

【次ページ】 試合に出られなかった大学1年。

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