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作新学院・捕手、配球に悔いなし。
小林誠司のように、満塁被弾を糧に。

posted2019/08/18 18:00

 
作新学院・捕手、配球に悔いなし。小林誠司のように、満塁被弾を糧に。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

作新学院の捕手・立石翔斗(左)らが呆然とするなか、本塁に生還を果たす中京学院大中京・元謙太。8回裏に逆転満塁ホームランを放った。

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph by

Hideki Sugiyama

 あの日と似た空気が甲子園を包んでいた。

 準々決勝第2試合・作新学院vs.中京学院大中京の8回裏のことだった。作新学院のエース・林勇成が先頭打者を四球で出すと、スタンドは1点を追う中京学院大中京の反撃ムード一色に染まっていた。

 想起したのは2007年夏の決勝戦。がばい旋風に沸いた佐賀北vs.広陵の劇的なゲームだ。8回裏に、佐賀北が広陵を逆転したあの試合は今も語り継がれる印象的な試合だったが、この試合もまた、8回にドラマが起きた。

 作新学院の指揮官・小針崇宏監督は、すかさず、投手交代を決断したのだが、甲子園の空気が変わることはなかった。

「そろそろやばいなぁ」

 林の後を受けた三宅悠弥はストライクが入らず無死満塁。三宅から強いストレートが持ち味の坂主清にスイッチしたものの、カウント2ボール1ストライクからのストレートが真ん中に入り、中京学院大中京の7番打者・元謙太(げん・けんだい)が一閃。打球は、左翼ポールの内側に飛び込む満塁本塁打となった。

 作新学院は3-6で敗れ、涙を飲んだ。

「球場全体が中京に傾いていたので、なんとか、自分のリードで流れをこっちに持って来たかった。先発した林も、交替で入った三宅も坂主もいいボールを投げていました。責任は全部自分にあります」

 大逆転負けの責任を背負うのは、捕手の立石翔斗だ。

「7回表の攻撃が終わったくらいからですね。無得点に終わって、そろそろやばいなぁという気がしました」

【次ページ】 8回よりも悔やむ7回の2失点目。

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