Jをめぐる冒険BACK NUMBER
“大槻組長”は岡ちゃんに似ている。
浦和を救った暫定監督の素顔と手腕。
posted2018/04/24 17:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Getty Images
北海道コンサドーレ札幌戦の翌日となる4月22日、浦和レッズの練習場には、「組長」「アウトレイジ」などと呼ばれて親しまれた大槻毅監督の姿は、もうなかった。
そこにあったのは、この3週間でトレードマークとなったオールバックをやめて、さらさらヘアで選手たちを指導する大槻毅新ヘッドコーチの姿だった。
その予兆は、すでにあった。
暫定監督として最後の采配となった前日の試合後、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督をはじめとした札幌のスタッフと健闘を称えあったあと、引き上げてきた審判団と握手をかわす際、これまたトレードマークである眼鏡を外していた。
そしてロッカールームに戻るとき、メインスタンドの観客から注がれた盛大な拍手に対し、これまで見せていなかった実に柔らかい笑みで応えたのだ。
その笑みは、重圧から解放された、あるいは、ミッションを成し遂げた男ならではのものだった。「スイッチを切った」という表現がぴったりくるような――。
選手を不安にさせない自己プロデュース。
「同じサッカーの仕事ですが、カテゴリーが違って、日本のトップで仕事をするにあたって、僕自身も一緒ではダメだと考え、スイッチを入れなければいけないというのはありました」
大槻前監督が自身のビジュアルに関して言及したのは、札幌戦の前日のことだった。
「僕は見た目で判断することは好きではないですが、見た目が非常に重要であるということも理解しています。こういうクラブの代表として、顔として仕事をするときに、何かしらのスイッチを入れたいという意図はありました」
それがひとり歩きしてしまって、どうなのかなと思っていますが……と指揮官は苦笑したが、いずれにしても、浦和というビッグクラブを率いる監督としての威厳を出すために、さらには、アカデミーの監督だった人物がトップチームを率いることで、選手たちに不安を感じさせないように、自己プロデュースしていたのは間違いない。