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金本監督の言葉使いが変わった年。
ニヒルで抑制的な「良き上司」に。 

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増田晶文

増田晶文Masafumi Masuda

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photograph byNanae Suzuki

posted2017/10/26 07:00

金本監督の言葉使いが変わった年。ニヒルで抑制的な「良き上司」に。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

1年目よりも金本監督のメディア露出は大きく減った。しかし自らのスタイルを確立した今年の方が、より「らしい」シーズンだった。

極めつけの一言は「僕が一番優しいんだよ」。

 昨年のキャンプ初日、金本はこう吼えていた。

「全体的に(バーベルの)重量が軽い選手が多いんじゃないか! 追い込んでやらせなさい!」(1月27日東京スポーツ)

 そういえば、現役時代の彼は嘯いていた。

「貧血になって半人前、ゲロをはいて一人前」

 筋トレになったら、眼の色が変わってしまうのが金本。己に厳しく、他人にも厳しい金本。筋肉で野球をする金本。

 ランニングでも一切、手を抜かない。ルーキー大山悠輔にはケツバットがとんだ。

「何、チンタラ走っとんじゃ!!」(2月15日サンケイスポーツ)

 同じく眼をかけている北條史也の坂道ダッシュでも愛のムチは炸裂する。

「お、北條か」

 金本監督はおもむろに腕時計を見やった。

「タイム測るぞ!」

 必死のパッチの形相で坂道を駆けあがる北條、肩で激しく息をつく彼に金本はいった。

「俺の時計はストップウオッチがついてないんだョ」(2月19日サンスポ)

 そして、極めつけのひとこと。

「僕が一番優しいんだよ」

藤浪には20勝を期待していたが……。

 オープン戦、阪神はセリーグ1位!

 優勝、狙えるんやないか?! 思考回路がシンプルな私は、捕らぬ狸の……しかし、今年の金本監督はぐいっと兜の緒を締めた。

「昨年もトップだもん。関係ない、それは」

 いざ開幕してみると――いろんな意味で大誤算の連続、その筆頭は藤浪の乱調であった。

「20勝、200投球回数がノルマ。内角を自在にえぐる投球を身につければ達成可能」

 金本の皮算用をよそに、若きエースは4月4日のヤクルト戦、畠山和洋への死球を機に泥沼へはまりこむ。藤浪は二軍落ちした。

「今後、彼の人生を左右するといえばオーバーかもしれないけど、僕はそれぐらいの眼でみたい」

 復帰戦は夏場、金本の心当てに反し、藤浪に浮上の兆しは見えず。10月のCS第3戦でのリリーフ好投まで待たねばならなかった。藤浪や昨年の鳥谷敬しかり、金本は中軸選手に過剰な期待をかけないほうがいいのかも。

【次ページ】 岡崎太一は「けっこう重かった」。

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