マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大阪桐蔭に流れる“投”のDNA。
中田、藤浪、そして徳山の共通点。
posted2017/04/04 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
こういう投手になっているとは思わなかった。
去年の秋は、もっと力を入れて、速い球を投げようとしていた。
彼の内側で燃えていなければならない“メラメラ”を、外に見せて投げていた。そこを見抜かれて、窮地に立つ場面も何度かあった。
冬を越えて余計な“アク”が抜けて、味わいがすっきりとした。
今思えば、アクとは欲だったのかもしれない。澄んだ味わいになったぶん、長いイニング、見れば見るほど味わい深い、退屈しない投手になった。
大阪桐蔭高・徳山壮磨のことだ。
長いリーチをしならせて渾身の力で投げ下ろせば、140キロ後半ぐらいいつでも出せる運動量抜群の腕の振り。数字に目がくらんで、そっちの方向へ走っていってしまったのでは……。そういう投手も少なくない昨今だから、正直、あまり期待もしていなかったこのセンバツ。
初戦、宇部鴻城高との試合前、ブルペンのピッチングを見て、私が間違ってました……、と心の中で詫びを入れたものだ。
下半身を起爆剤に、その反動で腕を振る。
三塁側ブルペンに、「ロッキング」で投球練習を繰り返す徳山壮磨の姿があった。
ロッキング。
あらかじめステップする幅に踏み込んでおいて、軸足はプレートに置いておき、後ろ足と前足を股関節で“橋渡し”しながら、軸足にためた体重を前足に移動させて腕を振る。そんな投球練習だ。
体重移動で投げようとしている。
下半身の躍動を起爆剤にして、腕はその反動で勝手に振られているだけ。この感覚が身についたら、しめたものだ。
スピードガンの数字は135でも、打者が140に感じてくれる「生きた速球」を投げる入口に立てる。