プロ野球亭日乗BACK NUMBER
中田翔はなぜ5番ではなく4番か。
侍ジャパンの難問「筒香嘉智の後」。
posted2016/11/15 13:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
「2人で話し合って、国際大会はやっぱりこれしかないって話で一致したんです」
2013年に行われた第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で最も印象に残っている侍ジャパンの戦いは、2次ラウンド初戦、台湾戦での逆転勝利だった。
メジャーでも活躍した台湾のエース・王建民のハードシンカーに苦しみ、6回まで零封され、2点を追う8回にようやく阿部慎之助、坂本勇人(ともに巨人)のタイムリーで同点に追いついた。ところがその裏、3イニング目となった田中将大(楽天)が捕まり、勝ち越しの1点を奪われた土壇場の9回だ。
この絶体絶命の局面で1死から鳥谷敬(阪神)が四球で出塁すると、2死で迎えた井端弘和(中日)の初球に二盗成功。そして井端が2ボール2ストライクから起死回生の同点タイムリーを中前に落としたのである。
試合は日本が延長10回の末、勝利を収めた。
この劇的勝利の後に井端が語ったのが、冒頭の言葉だった。
井端と内川が一致した、国際大会での打ち方。
話し合った相手とは内川聖一(ソフトバンク)だった。そしてその話し合いの結果、2人で一致した意見がこうだった。
「国際試合は相手投手の球筋や持ち球が分からないし、外国人投手のボールは手元で動く。とにかくポイントを引きつけて右方向に打ち返す意識を持たないとダメだということです。そういうバッティングをしないと、国際大会ではなかなか結果を残せないというのが僕らの結論でした」
そういう意識で打席に立っていたからこそ、井端はあの土壇場の局面でどうしても欲しい1本が打てたし、その大会では通算5割5分6厘の驚異的な打率を残した。同じ考えの内川も3割4分8厘の成績で、結果的にはこの2人が日本人選手で1、2位の成績だった。
侍ジャパンの4番は筒香嘉智(DeNA)ではないか、と考える一番の理由も、実はこの井端の言葉が強く残っているからである。