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岡崎慎司、何度目かの「得点宣言」。
便利屋とエゴイストを往復する理由。
posted2016/03/05 10:40
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
AFLO
レスター・シティFCは、1884年にその前身となるクラブが誕生している。長い歴史を持つクラブだが、近年の成績は低迷していた。'04-'05シーズン以降は2部が定位置となり、3部降格も経験している。'14-'15シーズンでプレミアリーグに昇格したが、降格圏内での苦戦が続いた。しかし終盤7勝1分1敗と逃げ切りに成功し、なんとか14位で残留を果たした。
そして'15年夏、阿部勇樹に続く、2人目の日本人選手がレスターにやってきた。岡崎慎司だ。シーズン開幕直前に監督が交代。新たに指揮を執るのはイタリア人のクラウディオ・ラニエリ。対戦相手の良さを消すために選手たちに献身的な守備を求めて、見事なカウンター攻撃で得点を挙げる。堅守速攻のスタイルをチームに浸透させた。
そして、エースストライカーのジェイミー・バーディーの11試合連続ゴールなどで波に乗ると、2位で前半戦を終了。1月下旬に首位に立つと、2月のリバプール、マンチェスター・シティ、アーセナルとの強豪相手の3連戦も2勝1敗と勝ち越し、その座をキープしている。
開幕戦に先発した岡崎は、第2節で初ゴール。ベンチスタートが続く時期もあったが、リーグ戦で出場しなかったのは2試合のみ。現在8試合連続での先発出場を続けている。監督交代は岡崎にとって不利に働くのではないかと思われたが、組織的な守備を構築する能力に長けたイタリア人のサッカーに、岡崎は欠かせないパーツとなった。
前線から厳しいプレッシングを発揮する守備は、前線だけにとどまらず、その豊富な運動量でチームを支えている。そんな岡崎の影響か、他の攻撃陣も良く走り良く守る。シーズン序盤は不安定だった守備も、今年に入ってから9試合で6失点と高い安定感を保っている。また、DF陣からのボールの引き出し役としても、岡崎が重要な鍵を握る。ボランチの位置までさがり、長いパスで得点の起点になることも多いのだ。
運動量や献身的な守備よりも、得点が欲しい。
19得点でリーグ得点王のバーディー。14得点だけでなく11アシストもマークしているリヤド・マフレズに比べると、岡崎は4得点と寂しい。しかし、数字には表れない“仕事”で躍進するチームを支えている。
「運動量や献身的な守備なんかを褒めてもらえても、結果(ゴール)を残していなければ、いつでも先発から落とされる」と岡崎は素っ気ない。
先発出場が続く現状だが岡崎が抱く危機感は、日々大きくなっているようだ。