フットボール“新語録”BACK NUMBER
グアルディオラが21歳DFに公開説教。
戦術の不理解は「最大の罪」なのか。
posted2016/03/09 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
「狂わんばかりのテンポ、信じられないスピード、卓越した技術。すべてのレベルが高かった」
ヨアヒム・レーブ(ドイツ代表監督)
歓喜の輪が広がっていただけに、ペップの怒りがより特別な光を放った。ピッチの上でDFのキミッヒの首に手を回し、相手の額に自分の額をこすりつけ、感情のブレーキを外して21歳を叱りつけた。
3月5日、バイエルンは敵地でドルトムントと0-0で引き分け、両チームの勝ち点差を5に保つことに成功した。もし負けていたら勝ち点差が2に縮まっていただけに、史上初のブンデスリーガ4連覇を成し遂げるうえで、価値あるドローだった。
なかでもキミッヒは慣れないセンターバックの位置で失点をゼロに抑え、攻撃面でも正確なパスで相手のプレスをいなした。この日、パス成功率はチーム最高の94%を誇り、1対1の勝率とボールコンタクト数はチームで2番目だった。本来なら、褒められるべきはずである。ところがペップ・グアルディオラは、カメラが捉えている公衆の面前で感情をぶつけたのだ。
その理由について、ペップは「君は世界一のDFのひとりだ、と伝えた」と会見ではぐらかしており、キミッヒ本人も「こうすべきだったという点について、監督から言われた」と具体的な内容については口を閉ざしている。
いったいペップは、なぜ激怒したのだろう?
試合は、ドルトムントの戦術的奇襲から始まった。
この疑問を掘り下げるには、まずは90分間における両チームのシステムの攻防戦を振り返る必要がある。
まず奇襲をしかけたのは、ドルトムントを率いるトーマス・トゥヘル監督だった。
キックオフ時、選手たちは4-2-3-1の形に並んでいた。オーバメヤンを頂点にし、左MFにロイス、トップ下にムヒタリアン、右MFにドゥルム、ダブルボランチにギュンドアンとバイグル。4バックは左からシュメルツァー、フンメルス、ベンダー、ピスチェクだ(残念ながら香川真司はベンチ外)。