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試合に出る日しか投げない調整法。
ヤクルトがブルペンの新常識を作る?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2016/02/15 10:50
昨年の日本シリーズで活躍した久古健太郎。中継ぎは故障の多いポジションだが、怪我なく活躍を続けて欲しい。
高校生にまで浸透した、投げる調整法。
実は、昨夏のU-18ワールドカップでも同じ傾向がみられた。試合が始まると、日本のベンチ入り投手陣が続々とブルペンでピッチングを続けるなか、他国(特にアメリカ)は日本ほどブルペンが賑やかではなかった。
大会中に、その点について日本のピッチングコーチを務めていた仲井宗基(八戸学院光星監督)に尋ねたが「国の文化の違いというんでしょうか。おそらく、(日本は)一度、肩を作って安心したいというのがあるんじゃないでしょうか。指導する側はそう考えます」と語っていた。
他の国が正しいというつもりはない。ただ、日本に長く定着してきた“常識”を疑わないことは、成長を止めてしまうこともあるのではないか。ヤクルトは、高津の経験を見事に生かした調整法に活路を見出した。
久古「試合に出なくても実質連投だった」
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そして当の中継ぎ陣にも、この調整方法の評判は上々なのである。昨季、ワンポイントの左腕投手として38試合に登板した久古健太郎はいう。
「以前までは、自分が投げない場面でも一度肩を作ってから待っていました。でも、去年は登板がきそうだとなってから作り始めるようになりました。だから、登板がなさそうな試合展開のときは1球もブルペンで投げなかったんです。
つまり、以前までの調整法では試合には出なくても実質連投だったんですよね。今はそれがなくなったので、体にかかる負担が違います。これまでは、ただ不安だから投げていただけだったんだなと気づかされました」
また、そうした調整法をすることによって、考え方が変わったといったのは74試合登板の秋吉である。
「登板までのウオーミングアップが2回作りだったのが1回作りになって、最初は不安でした。急に投げるのがどんな感じになるのか怖かったんですけど、次第に慣れてきた。すると、やはり疲れが残らないので楽でした。本来なら、去年の自分みたいに70試合も投げていたら、疲れてくるのは当然だと思います。どこかで球数を減らしていかないとシーズンは持たない。たとえ1年は投げられても、僕らには次の年もその先もシーズンはある。そういうことを考えたら、球数を少なくしていかないと長い野球人生にはならない」