プロ野球PRESSBACK NUMBER
今年のトリプルスリーは広島から?
内川に師事した鈴木誠也が覚醒宣言。
posted2016/02/13 10:50
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Hideki Sugiyama
新井貴浩が目を丸くして送球の行方を追った。ジャンプして何とか球を受けた捕手・會澤翼も驚きの表情を浮かべた。中継に入った新井の目の前でさらに伸びたように見える返球をしたのは、4年目の鈴木誠也だ。
今春の広島キャンプで、背番号51の存在感は日に日に高まっている。肩だけではない。守備力、走力、打力すべてで高い評価を受ける。チーム内外から「トリプルスリーを狙える能力がある」という声も聞かれ始めている。
鈴木の打撃は、昨季とは全く違う。構えからフォロースイングまで、まるでソフトバンクの内川聖一のようなのだ。今年1月にチームメートの小窪哲也を介して、その内川との合同自主トレが実現した。2014年まで7年連続の打率3割以上の安打製造機に弟子入りを志願し、打撃の真髄を学んだ。
食事の時間も惜しんでバットを振り、映像を見る。
「軽く打っているのにすごく飛んでいく。自分のティーバッティングとか、恥ずかしくなってくる」と、内川のバッティングに衝撃を受け、それまで自分がいかに力任せで飛ばそうとしていたかに気付かされた。
打撃は力だけではない。下半身の使い方、手の使い方、バットの出し方など、内川の言葉のひとつひとつが鈴木の糧となった。そして、ともに練習する姿からは言葉以上のものをもらった。
1日6時間の練習を終えた後も、内川の映像と自分の映像を繰り返し見続けた。食事中も「この時間が惜しい。打ちたいし、映像を見たい」とこぼすほど充実した時間だった。
実は昨秋キャンプ終盤にも、顔の位置を意識することで左肩の開きを抑えるフォーム改造を行っている。昨季からの上積み、充実のオフが今春の好スタートにつながっているのだ。
左足を上げてゆったりと間を取り、球を捉える。ロングティーでは、チーム一の飛距離を飛ばした。実戦ではタイミングが合わない打席も見られるが、打撃の成長は目に見えて分かる。