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混戦予想を覆した箱根圧勝の青学大。
神野らが抜ける来年も強い層の厚さ。
posted2016/01/06 10:30
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Hirofumi Kamaya
混戦になると思っていた。
今年の箱根は、「山の神」神野大地が万全ではない以上、復路勝負になる――。
それはエキサイティングなレースになればいいのに、という願望に過ぎなかったのかもしれぬ。
終わってみれば、連覇を達成した青山学院大の強さには脱帽せざるを得ない。強かった。本当に強かった。
その勝因はなんだったのか。
12月29日まで状態が悪かった久保田和真。
レースを振り返ってみると、1区で青学大は主導権を握り、ここで久保田和真が区間賞を取ったことで優勝の確率がグンとアップした。潰滝大記(中央学院大)の揺さぶりを涼しい顔で受け流す様子は、格の違いを感じさせた。
主将の神野は「10km地点での久保田の表情を見て、これは区間賞行くな、と思いました」という。
16km過ぎにスパート、後続を引きちぎって、ライバルの東洋大には53秒差、駒大には実に1分50秒差をつけた。この時点で、駒大は優勝圏外に去った。
驚くべきは久保田の調整力である。
実は区間エントリーの発表があった12月29日の時点で、久保田は「まったく計算できない状態」(原監督)だったという。普通の練習でも他の選手についていけないほどだったのだ。
ところが12月30日になって、急激に調子が上向いたという。久保田自身も、「その理由は分からないんです」と笑顔を見せるが、独特の調整感覚を持っているとしか言いようがない。
ただし、名門校出身のエースの中には、こうした感覚を持っている選手が多い。そのなかでも久保田はピカイチではある。
そして2区の一色恭志が自分のペースを守り、往路の不安要素だった3区の秋山雄飛が区間賞の走りを見せ、この時点で青学大の優勝確率は80パーセントほどまで跳ね上がったといえる。
東洋大は、期待された服部弾馬が秋山に1分35秒差をつけられてしまっては打つ手がなかった。