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混戦予想を覆した箱根圧勝の青学大。
神野らが抜ける来年も強い層の厚さ。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byHirofumi Kamaya

posted2016/01/06 10:30

混戦予想を覆した箱根圧勝の青学大。神野らが抜ける来年も強い層の厚さ。<Number Web> photograph by Hirofumi Kamaya

6つの区間で区間賞を手にした青学が往路復路の完全優勝。覇権はしばらく続きそうだ。

原監督が神野に期待したタイムは……。

 そして青学大の最大の不安要素は、「山の神」だった。全日本大学駅伝の後、11月下旬まで練習で走れない状態だったが、「山以外は考えていません」と本人も諦めずに調整を進め、無事、走れるところまでこぎつけた。

 それでも前回のような1時間16分台の走りは期待できず、原監督が「1時間20分で走ってくれればいいのよ。だって、それで区間賞を狙えるわけですから」と焦りを見せなかったことが、好結果につながった。

 ここに青学大独自の選手起用が見られる。11月下旬まで走れず、本格的に走り始めたのが12月10日前後とあっては、普通だったら山上りは任せられない。不安が大きすぎるからだ。

 しかし、原監督には神野を平地で起用するプランはなかった。

「山しかない」

 それは神野の適性を見極め、区間特性を把握している原監督ならではの「感性」である。この一連の指導、采配は見事としかいいようがない。

 神野は1時間19分17秒、区間2位の記録。2位の東洋大に3分4秒差をつけ、安全圏で復路を迎えることになった。

復路の記録だけを見ても、2位とは4分以上の大差。

 そして青学大は復路でも、他校との力の差、選手層の違いを見せつけた。

 もともと復路記録はあまり話題にならないものだが、復路だけを見ても2位の東洋大とは4分7秒の差がついている。大差だ。

 しかも6区では、1年生の小野田勇次が58分31秒という区間記録に迫るタイムで区間2位、そして7区は4年連続の小椋裕介とあっては他校に付け入る隙はない。

 さらに「来年も青学は強い」と実感させたのは、8区の下田裕太(2年)の走りだ。

 前回は、先輩の高橋宗司が1時間5分31秒で区間賞を獲得した。今年は気温が高く、気象条件がハードだったにもかかわらず、下田のタイムは1時間4分21秒だ。区間2位は駒大の実力者、馬場翔大で1時間5分22秒。馬場が走り終わってから笑顔だったのは、想定タイムを上回っていたからだろう。

 つまり、下田は他大学の思惑とは違うレベルの走りを見せたのだ。

 アンカーの渡邉利典は、前回の安藤悠哉のタイムからわずか4秒遅れの1時間10分7秒で区間賞。暑さもあり、安全運転でのこのタイムは青学大のレベルの高さを証明している。

【次ページ】 2、3人変わっても優勝しそうな青学の分厚い層。

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