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オーガスタへ、それぞれの紆余曲折。
ワトソン、マキロイ、そしてウッズ。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byAFLO

posted2015/04/07 10:30

オーガスタへ、それぞれの紆余曲折。ワトソン、マキロイ、そしてウッズ。<Number Web> photograph by AFLO

数々の記録を打ち立てたタイガー・ウッズが世界一の座を失ってから約1年。まだ39歳、老け込むには早過ぎる。

「僕は失敗からしか学べない。だから何をやるにもスロー」

 わずか3年のうちに2度もオーガスタを制したのはスピード出世だという見方もある。だが、プロデビューから10年の歳月を経て、ようやくメジャータイトルを手に入れたその歩みを、彼自身はむしろスローだと感じていた。生涯で一度もコーチを付けたことがなく、すべては自己流。

「僕は失敗からしか学べない。だから何をやるにもスローなんだ」

 だが、どんなにスローであっても、ひとたび身に付けたものはワトソンの強力な武器と化す。幼少時代から自宅の裏庭の大木を相手に、その枝葉や幹の上下左右の隙間をめがけてボールを打ってきたワトソン。'12年マスターズのプレーオフ2ホール目で、右前方の大きな木々をかわしながら40ヤードもフックさせてグリーンを捉えた奇跡の一打は、彼にしてみれば、裏庭の一人遊びを再現する「きわめてイージーなショット」だった。

今年まだ4試合という実戦の少なさに不安。

 とはいえ、マスターズ優勝の興奮から醒めることができなかった'13年は「グリーンジャケットに二日酔いしていた」失敗の年になった。だが、その失敗から学んだ'14年は、プロゴルファーとしては致命傷だと揶揄されてきた激昂型の性格の改善に努め、養子縁組した息子のカレブくんの良き父親となるために生活改善にも努め、「僕は生まれ変わった」という言葉通りのラウンドを見せた。弾道のコントロールのみならず、試合中の感情のコントロール術も覚え始めた昨年のワトソンは、奇跡の一打で派手に勝利した'12年とは対照的に、冷静で静かな我慢のゴルフでオーガスタを制した。

 昨年暮れに2人目の養子縁組が成立し、今年は一男一女の父親としてオーガスタに戻ってくる。人間としてさらに一回り成長し、大会2連覇と3勝目を狙う立場だが、心配される要素も実はある。3月に親友が急死し、ワトソンはアーノルド・パーマー招待を急遽欠場して葬儀に駆け付けた。その悲しみの余波も気になるし、今年に入ってからの出場がわずか4試合という実戦経験の少なさも少々気になる。だが、ワトソンならきっと持ち前のあの豪打で、自らの不安要素も彼を応援する人々の懸念も、何もかも吹き飛ばしてくれそうで、だからこそワトソンに期待が集まっている。

【次ページ】 昨年20歳にして優勝を争ったスピースも。

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