錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭が普段我慢していることとは?
ツアー中の宿泊、食事、気晴らし事情。
posted2015/03/31 10:40
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
錦織圭がこれほど日本中から注目されるようになり、グランドスラム以外のたとえ小さな大会でもその初戦の結果からニュースで報じられるようになったことで、これまでテニスに詳しくなかった人たちからよく驚かれるのは、テニスの大会がいかに多く、テニスプレーヤーのスケジュールがいかにハードかということだ。
2月最終週にアカプルコで準優勝した錦織はすぐにデビスカップのためカナダのバンクーバーへ飛び、翌週末にはカリフォルニア州のインディアンウェルズでマスターズ大会の初戦を戦っていた。苦手のサーフェスやボールの影響もあり、インディアンウェルズではベスト16止まりだったが、その翌週にはフロリダ州のマイアミでまたマスターズ大会が始まっている。
多くのテニス選手がツアー生活の楽しみとして挙げるのは?
この時期が一年の中でも特に大変なのかというと、そういうわけでもなく、全仏オープンへ向けたクレーシーズンも、その後わずか3週間で始まるウィンブルドンまでのシーズンも(昨年までは中2週間だった)、全米オープンまでを含めた夏の北米ハードコートシーズンも、とにかくどこをとっても忙しい。そこへ、今回のようにデビスカップが入ってくることもあれば、4年に1回はオリンピックも絡むのである。
そんな競技生活……つまり旅から旅のホテル暮らしが日常であり、プレッシャーやストレスに満ちた勝負に繰り返し挑む生活の中では、ツアー自体を楽しみ、リラックスする術を知っていなければ、押し潰されてしまう。たとえば〈食事〉は、多くのテニス選手がツアー生活の中の楽しみとして挙げるものだが、錦織も海外での記者会見などでテニス以外に話すことといえば、他愛もない食事の話がもっとも多いように感じる。
この前マスターズ大会が行なわれたインディアンウェルズという地は、アメリカの超富裕層がリタイア後の余生を送ったり、別宅を構えたりするリッチなコミュニティで成るエリアで、一般人が気安く泊まれるようなホテルや公共の交通機関も皆無だが、テニスコートにゴルフコースにと、お金と時間さえあれば娯楽施設には不自由しないところだった。