錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭が普段我慢していることとは?
ツアー中の宿泊、食事、気晴らし事情。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byHiromasa Mano
posted2015/03/31 10:40
オフの時は、ゲームをしたり日本で録画したテレビのバラエティ番組などを見て過ごすことも多いという錦織。クルマやファッションなどの派手な趣味に走るわけでもなく、お酒もそれほど嗜まないらしい。
最近、ゴルフ以外に我慢しなくてはいけなくなったことは?
試合の前日などに生ものや脂っこい食事をしないということはアスリートの常識としても、とりわけマイケル・チャン・コーチはその方面にも厳しいと聞く。しかし錦織自身は、「体にいいものを常に摂るようには心がけていますけど、食べたいものを特に制限しているということはないですね。デザートもしっかり食べていますし」と、昨年からの一部報道通りの“スイーツ男子”もアピールした。では最近、ゴルフ以外に我慢しなくてはいけなくなったことは? そんな問いに対しては、「どうでしょうね。何かあるとは思いますけど、今思いつかないので考えときます」と軽く受け流した。
答えを無理に捻り出すほどのことでもない。それが何であったとしても、今の地位と引き替えにしてでも取り戻したいものであるはずがないのだから。我慢も苦悩も、他人にそうとわからないうちに淡々と消化し、わずか2カ月前には「居心地が良くない」と言っていたトップ5にももうすっかり溶け込んでいるようにさえ見える。その能力は、コートや対戦相手に短時間でアジャストさせる巧みなテクニックに通じるものかもしれない。
テニスのハードスケジュールの良い側面。
時に選手から文句も出るテニスのハードスケジュールには、一方でトップへの適応能力をスピーディに促すという側面があるのではないだろうか。重圧の多い実戦経験を多く積めるという意味のみならず、戦いの舞台の一つ一つが、大スターとして扱われ、それを自覚し、それとして振る舞う機会だからだ。
そして何より、敗れても〈次〉の大きなチャンスがすぐにやってくることはアスリートとして幸せなこと。それを応援できるテニスファンもまた幸せである。