今野のテストは、伊野波への信頼の裏返しでもある。

　もちろん、試合に出られないことに対しての悔しさはある。それでもここまでの数年間、「それを表に出さないというのもひとつの表現」と自身のネガティブな感情を見せずに、ただ「チームのために」と戦ってきた。ザッケローニ監督はその姿勢を評価し、W杯メンバーに伊野波を選んだ。その事実は彼にとって大きな自信となっているように感じた。

　同時に伊野波の安定感に大きな信頼を寄せているからこそ、監督はコスタリカ戦で今野を試せたのだろう。

　W杯という難しいステージを勝ち抜くためには、どんなリクエストにも対応し、どんなシチュエーションにも順応できる優秀なスペアが必要だ。それを理解している伊野波は、競争心よりも平常心でW杯へ挑む。その覚悟があるからこそ、伊野波は「なにか」のための準備を積み重ねている。

　心強いスペアの存在は監督だけでなく、選手たちにも安心と積極性、勇気を与えているに違いない。