フットボール“新語録”BACK NUMBER
岡崎が本田に伝えた“異常”な要求。
「絶対に走るから、見える前に裏へ」
posted2014/06/06 10:30
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
「圭佑には『絶対に走っているから、こっちを見る前に出して』と伝えています」
岡崎慎司(日本代表)
大胆かつ慎重に突き詰めれば、ブラジルW杯における攻撃の武器になるかもしれない。
それは日本人選手だからこそ成立する、“受け手を見ないで裏に出すパス”――。コスタリカ戦の試合後、偶然にも2人の選手がこの取り組みを明らかにした。
1人目は、右FWの岡崎慎司だ。
後半から出場した岡崎は、ボックス内への走り込みで3点目を呼び込んだものの、「サイドのポジションだと、シュートまで持って行ったときに疲れている。それでも(正確なシュートで)コースを突けるようになりたい」と改善点をあげた。
今季マインツでは「真ん中で自由に動く」ポジションを与えられ、シュートの場面で爆発力を発揮できたが、サイドだと上下動に追われて体力の配分が難しくなる。今季マインツで15点を決めた得点力を代表でも発揮するためには、本番までに微修正が必要だ。
そのテーマをさらに掘り下げようとしたとき、冒頭の“受け手を見ないで裏に出すパス”の話が飛び出てきた。以下、岡崎とのミックスゾーンにおけるやり取りだ。
「絶対に走っているから、見える前に出して」
――ザッケローニ監督は守備の仕事もすごく求めている。攻守のエネルギーの配分をどう考えている?
「守から攻への切り替えの時がすごくチャンスなのかなと思いますね。たとえば自分たちが守備をしているとき、相手のサイドバックが僕と同じラインに並んでいたとしましょう。
そのときに僕がちょっとでも前にポジションを取っていれば、チームがボールを取った瞬間にチャンスになる。そういう場面は今日の前半、ベンチから見ていてもすごくあったんですよ。相手は5バックだったけれど、裏にパスが出ればチャンスになっていたんで」
――確かにそうかもしれない。
「たとえば、(本田)圭佑にボールが渡った瞬間に、自分が常に裏に走るようにしたとします。それを圭佑がわかっていたら、あいつはこっちを見なくてもパスを出せるわけじゃないですか。わかりますか? 圭佑が右サイドに背中を向けてボールを受けても、僕が必ず走っていれば、確認することなく反転した瞬間に斜めのパスを出せる。だから、『絶対に走っているから、見える前に出して』と伝えています」
――そんな大胆な要求をしているとは。
「強豪相手に対しては、やっぱり守から攻の切り替えが重要なのかなと。もちろん呼吸が整わない状況で攻撃するときもあると思うんですけど、それでもリスクを冒して相手より前に出られればビッグチャンスになる。何度もそれをやると相手も疲れますしね。そういう体力勝負を自分はしてもいいのかなと思います」