田中と比べて圧倒的に控えめだった雄星の1年目の目標。

　1年目の自主トレの最中だった。

「まずは開幕一軍に残れるように」と発言する雄星に、田中の1年目のときの話をした。すると触発されたのか、その場で「やれるものならすぐにでも活躍したいという気持ちはあります！」と目標を上方修正したのだ。

　自信と不安の間を行ったり来たりしているようだった。

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　今にして思えば、このときすでに左肩に痛みを感じていて、気持ちが弱くなっていた面もあったのかもしれない。間もなくキャンプインした雄星は、投球フォームを完全に見失い、さらにトーンダウンしていく。

　そんな雄星の姿に厳しい言葉を浴びせていたのが先輩の涌井秀章だった。

「考えてることがよくわからないですよね。『3年ぐらいかけてじっくりと……』とか言ってるけど、それは首脳陣が判断することじゃないですか。だったら、独立リーグにでも行けばいいんですよ。プロ野球に入った以上、1年目から活躍したいっていうのが本当でしょう。僕だって1年目からがむしゃらでしたからね。意地でも一軍に残りたかったから、飛ばしていたし、ピッチングも止められるまでやっていた。彼にはそういうのがないんですよね」

王貞治会長もプロ野球の生き残りの厳しさを説く。

　涌井のように一見、のんびりしているように映る選手でも1年目から必死だったのだ。

　だからこそ、1年目は1勝に終わってしまったが、2年目に12勝と飛躍することができたのだ。

　そういえば先日、ソフトバンクの新入団選手の記者会見でこんなことがあった。

　1位指名を受けた習志野高校の捕手、山下斐紹が「5年以内に一軍で定着したい」という旨の発言をすると、すかさず王貞治会長から「それじゃ遅い。城島は3年で出てきたし、それぐらいのものを期待している」と激励の意味も込めた「ダメ出し」をくらってしまったのだ。

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