Sports Graphic NumberBACK NUMBER

<外国人監督が語る> ニッポン野球の正体。 ~バレンタイン・ヒルマン・ブラウン・コリンズの証言~ 

text by

ロバート・ホワイティング

ロバート・ホワイティングRobert Whiting

PROFILE

photograph byKoji Asakura

posted2010/12/16 06:01

2005年、外国人監督として初めて日本シリーズを制覇。現在は、テレビ局ESPNの野球解説者

2005年、外国人監督として初めて日本シリーズを制覇。現在は、テレビ局ESPNの野球解説者

日本野球界に外国人監督はなぜか根付かない。'05年にバレンタイン、
'06年にはヒルマンが日本シリーズを勝ち取ったが、その勢いは長続き
しなかった。彼らは「日いづる国」で 何に悩み、何を感じたのだろうか。
そして外国人監督はもはや必要ないのだろうか――
33年前に『菊とバット』で日米の野球観の違いを喝破した
ロバート・ホワイティングが外国人監督の見た「ニッポン野球」に迫る。

 日本とアメリカは、野球というスポーツについて、考え方が二分される。どちらも一世紀以上野球を続け、どちらもその間に独自のやり方を開拓したからだ。来日したアメリカ人監督は、やり方の違いから誰もが欲求不満や苛立ちを覚えずにはいられない。最近のガイジン監督たちも、例外ではない。断わっておくが、日本野球に対する彼らの尊敬の念に嘘はないし、年々増しているくらいだ。

マーティ―・ブラウン '06-'09 Carp/'10 Eagles
監督として史上最多となる、12回の退場処分を受けている。退場した時の成績は9勝3敗

 ボビー・バレンタインによれば、2005年のロッテマリーンズは、メジャーリーグのワールドチャンピオン、シカゴ・ホワイトソックスに匹敵する充実ぶりだったという。その1年後、ファイターズを優勝に導いたトレイ・ヒルマンは、「日本野球はアメリカ野球に勝るとも劣らない。そろそろ敬意をもって同等に扱うべきだ。日本野球のレベルはメジャーリーグ級だ」と語り、'09年のWBCの後、こう付け加えた。

「日本野球は、長いシーズンを闘うには層の厚さに欠けるが、短いシリーズなら十分実力を発揮できる」

 また彼らは皆、アメリカ人選手の一部を日本でプレーさせれば上達する、と信じて疑わない。広島と楽天の指揮を執ったマーティー・ブラウンはコルビー・ルイスの例をあげた。広島カープで2年プレーして投球技術を磨いた後、今年、テキサス・レンジャーズでスターになったアメリカ人だ。

苦労は、日本野球のやり方を変えようとしたとたんに始まる。

 ルイスはカープの選手に交じって走り込みをしたおかげで、スタミナが増した。日本人のコンパクトなモーションを採り入れ、日本式投法を学んだことで、コントロールもぐんとよくなった。ブラウンは語る。

「コルビーは日本で、ストライクゾーンぎりぎりを狙うことを覚えた。ど真ん中に投げて勝負してはいけない。日本人はバットを合わせるのがうまいからね。だからゾーンすれすれを狙うようになったのさ」

テリー・コリンズ '07-'08 Buffaloes
中4日登板などメジャー式の改革を標榜したが失敗。来シーズンよりNYメッツの監督に就任

 ところがアメリカ人監督の苦労は、日本野球のやり方を変えようとしたとたんに始まる。'07年にオリックスの監督を引き受けたテリー・コリンズは、日本人のトレーニング過剰が気になった。1月の合同自主トレしかり、春季キャンプの夜明けから日没までのトレーニングしかり、シーズン中の試合前の長ったらしい練習しかり、強圧的なコーチが主導する秋季キャンプしかり。

 コリンズに言わせれば、「日本人選手のコンディションは、3月の時点なら世界一だろう。だからWBCであんなにいい結果が残せるんだ。しかし8月にはガス欠になる。特にピッチャーが肩を壊す」。

 コリンズは2年目の'08年、シーズン半ばにして辞任した。

「日本人の異常な練習好きに嫌気がさした。ピッチャーはブルペンで毎日投げ込んでいる。やめるように忠告したが、聞く耳を持たない。これ以上我慢できないよ」

<次ページへ続く>

【次ページ】 「バントは日本人の“免罪符”だ」(ヒルマン)

1 2 3 NEXT
1/3ページ

ページトップ