サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
欧州遠征で無得点の“ジーニアス”。
それでも柿谷が絶対に必要な理由。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/10/21 10:30
ベラルーシ戦後、攻撃陣の連係について「うまくいっている、いっていないだけじゃなくて、ただただ勝ちたかったんで、それだけです」と答えている柿谷。
東欧遠征2戦目となるベラルーシ戦の2日前だった。約1時間半の全体練習が終わると、柿谷曜一朗はアルベルト・ザッケローニ監督から呼び止められた。
最初は清武弘嗣と2人で。少したって、今度は単独で。柿谷は後ろ手に組んだ直立の姿勢で、通訳を介しての説明に聞き入る。
最後は岡崎慎司も加わってのザック教室。指揮官おなじみの個別レッスンが終わったのは、15分ほどが経過してからだった。内容は詳しく明かされていないが、清武と一緒のときは守備について、その後は攻撃についての話だったようだ。
ザッケローニ監督はベラルーシ戦前日にも柿谷に声を掛け、今度は通訳を介さずに英語で説明している。セルビア戦前の練習も含めて、東欧遠征では柿谷への個別指導シーンが頻繁に見られた。
W杯まで8カ月を切っている。指揮官は必死だ。
「僕は代表に遅く入ってきたので、戦術理解をもっとしていかないといけない。早く吸収していきたい」
柿谷も必死だ。
遠藤保仁も認める柿谷の2つの「良さ」とは。
東アジア杯での、2試合出場3得点という華々しい活躍をステップに、柿谷がザックジャパンの“本隊”に合流してから2カ月あまりがたった。この間に行なわれた国際Aマッチは5試合。柿谷はその内の4試合に先発し、1試合は後半から出場している。
だが、5試合での得点はない。特にアウェイで行なわれたセルビア戦とベラルーシ戦では、何もできなかったと映るほど、「良さ」が出なかった。
柿谷の「良さ」とは何か。遠藤保仁は、柿谷には「個の良さ」と、2列目とすんなり連係できる「コンビネーションの良さ」があると言う。
「曜一朗は裏への飛び出しがいい。足元の技術もしっかりしている。だから裏も狙えるし、足元でも受けられる。2列目や曜一朗が気持ち良くプレーすれば日本の特徴は出る。彼らは技術もしっかりしているし、アイデアも豊富。それを最大限に使っていくのが日本にとって重要だと思う」
遠藤の言葉からは、すでに柿谷が中心選手たちの中でもレギュラーとして認められているということが伝わる。得意なプレーでアピールするという段階は早々と超えてしまっているのだ。