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欧州遠征で無得点の“ジーニアス”。
それでも柿谷が絶対に必要な理由。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/10/21 10:30

欧州遠征で無得点の“ジーニアス”。それでも柿谷が絶対に必要な理由。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ベラルーシ戦後、攻撃陣の連係について「うまくいっている、いっていないだけじゃなくて、ただただ勝ちたかったんで、それだけです」と答えている柿谷。

柿谷はなぜ東欧2連戦でくすぶったのか。

 主力選手にこれほどまで称賛される背番号11だが、東欧2連戦で良さを出せなかったのはなぜか。そこには大きく2つの理由がある。

 まず1つは、最終ラインでの駆け引きが今までの相手以上に難しかったことだ。サイズの大きい選手を最終ラインにそろえ、引いて守るチームからスペースを見つけるのは容易ではないし、スペースを作ったり、スペースに出たりするための駆け引きも、今までの動き出しでは通じなかった。

 そしてもう一つは、今回のザックジャパンが、人の密集する中央付近でパスをつなぎ過ぎたことにある。

 セレッソ大阪のチームメイトで、柿谷を最も知る山口螢には、柿谷が窮屈そうにしているように見えたという。

「ゴール前、バイタルあたりで細かくつなぎ過ぎているように見えた。もうシュートを打ってええんちゃうかというくらいな場面もあった。カウンターの場面でももう少し早く出していれば、というのが何回かあった」

「まずは監督の望んでいることをやる」

 ただ、“つなぎ過ぎ”にもハッキリとした意図がある。

 主にセルビア滞在中に行なわれたフォーメーション練習。柿谷はボールを受けると、ほぼ必ずと言っていいほど、2列目に落としていた。前を向いて仕掛けることがほとんどなかった。

 ボールを持ってドリブルで仕掛けることができるのも柿谷の特長である。だから、トレーニングでワンツーの壁としてのプレーに終始するのは違和感があったが、聞けばこれは、2列目とのコンビネーションを一刻も早く完成させたい指揮官からの指示だった。

 柿谷は、「それだけではダメだと思うが、とにかくまずは監督の望んでいることをやる。それがチームコンセプトですから。あとは正確性だけだと思う」と、ザッケローニ監督の意図を受け止めながら練習に取り組んでいた。

柿谷が加わることで広がった攻撃の可能性。

 加えて、このようにも言った。

「裏へ飛び出して決める形については、監督もオプションの一つと考えてくれていると思うし、練習も含めて(他の選手に)自分を見てくれとは常に言っている。ただ、あれだけ能力の高い選手たちが後ろ(2列目)にいてくれる。だから、いいパス、いいシュートというのはどんどん出てくる。それに応じて自分のプレーを変えていく必要はあると思う」

 つまり柿谷は、裏に抜けて一発を狙う動きとは別の、今までと違うコンビネーションプレーに取り組み始めている。攻撃陣が中央でつなぐことにこだわったのは、柿谷が加わったことによる可能性の広がりを期待しているからであり、柿谷自身も、得意なプレーを見せることと同様に、後者の形にも時間を割くべきであると腹をくくっているのだ。

【次ページ】 「今はW杯のために試行錯誤する時期」

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