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イングランド、W杯招致惨敗の理由。
英メディアとFIFA、その暗闘の全貌。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byAP/AFLO

posted2010/12/04 08:00

イングランド、W杯招致惨敗の理由。英メディアとFIFA、その暗闘の全貌。<Number Web> photograph by AP/AFLO

自国で最も権威あるプレゼンテーターともいえる、ベッカムとウィリアム王子のふたりと、キャメロン首相まで出席したにもかかわらず敗北したイングランド

「僕たちの夢は大勢の人達を幸せにする、あなたやあなたの曾孫、そしてサッカー界のすべての人達が本当に誇りに思えるW杯を開催することです」

 W杯の2018年大会の開催国を決めるプレゼンテーションで、デビッド・ベッカム(写真左)は自らのスピーチをこう締めくくった。

 しかし数時間後にチューリヒの会場で歓声を挙げたのは、ベッカムを擁するイングランドの代表団ではなく、アルシャビンを伴ったロシアの招致活動メンバーだった。

 イングランドのショックは相当に大きい。おそらく南アでドイツに1-4と完敗した時よりも、深い痛手を負ったのではないだろうか。

 たしかに招致合戦では、最大のライバルであるロシアが優位に立っているとも噂されていた。だが投票直前の段階では、婚約騒動で一躍時の人となったウィリアムズ王子(写真右)まで担ぎだしたイングランドが再逆転したのではないかと言われていたほどだ。もともとイングランドは、FIFAの視察団が作成したレポートでも、FIFAが経営コンサルタントに提出させた収益力に関する報告書でも、トップクラスの評価を得ていたはずなのである。

 イングランドはどこでどう間違ったのか。

 国を挙げての「戦犯探し」が始まった今、真っ先に後ろ指をさされそうなのは紛れもない同胞、イングランドのメディアだ。

裏での駆け引きこそ重要な意味を持つW杯の招致活動。

 W杯の招致合戦には、表と裏二つの世界がある。

 表はきれいごとの世界。大会のコンセプトや意義、施設の充実度やインフラの整備状況、W杯を開催することの有形無形のメリットなどをアピールする作業だ。

 だが実際には裏の世界、投票券を持つFIFA理事会役員をいかに抱き込むかというプロセスの方がはるかにものをいう(本来、FIFAの理事会は、ゼップ・ブラッター会長以下、欧州が8名、アジアとアフリカが各4名、北中米と南米が各3名、オセアニアが1名の計24名から構成されており、それぞれ1票ずつ投票権を持つ形になっていた。今回はそのうちの2名が後に述べる理由で投票権を剥奪されていたため、22名による投票となった)。

 裏のプロセスでは、FIFA内部の派閥争いまで含めた権謀術数が用いられ「実弾(賄賂)」もごく当たり前のように飛び交うとされている(日本も同様だったと指摘しているのではないので念のため)。ましてや今回は2018年大会と2022年大会、両方の開催地を同時に決める形になったため、虚虚実実の駆け引きはさらに熾烈なものとなった。

 いかに激しい裏工作が行われたかは、地球上のどこよりも気候がサッカーに不向きで、資金力とエキゾチシズム以外ほとんど売りのなかったカタールが、2022年大会の開催国に選ばれていることからもうかがえる。

【次ページ】 イングランドサッカー協会会長がスキャンダルの餌食に。

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