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<セ・パの最多安打男が語る> 西岡剛×マートン 「200本超えで見えた新世界」 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byYasuyuki Kurose

posted2010/11/17 06:00

<セ・パの最多安打男が語る> 西岡剛×マートン 「200本超えで見えた新世界」<Number Web> photograph by Yasuyuki Kurose

小学生の頃から憧れてきたイチローへの想い。

 イチローは、第1回のWBCで同じ釜の飯を食った『青木、ムネ(川崎宗則)、西岡』の3人の名前をよく口にする。西岡が自らの猛打賞の記録に並んだ時も、『はよ抜け、抜いて大喜びしろ、まだ早いよ』と檄を飛ばした。

「僕、別に喜んでなかったんですけど(笑)。でも、イチローさんは憧れの選手です。小学生から高校生になるまでずっと首位打者で、それをテレビで見てたわけですから、リスペクトしちゃいますよ。ただ、憧れで終わってしまうのは、イチローさんの数字には絶対に届かないって決めつけてるのと同じですから、それでは自分の成長をストップさせてしまいます。結果が出たのは1年だけだし、首位打者も200本を打ったのも1回だけ。来年以降、野球人生を終えるまでコンスタントに成績を残していかなければ、超一流という場所には行けません」

チームが空中分解の危機の中、西岡自身も自分を見失っていた。

 飛躍のきっかけは、去年の悪夢だった。

 ボビー・バレンタイン前監督の進退についてフロントやファンを巻き込んだ騒動は、選手にも悪影響を及ぼした。チームがバラバラになるという危機感の中、思うように自分の数字を伸ばせない西岡は、思い悩んでいた。

「去年はつらくて、野球、辞めようかと考え込むくらい落ち込みました。打てなくなって、やっとバッティングがつかめたと思ったらケガして……WBCのメンバーから外されて、燃えたのが空回りしたんだと言ってくれた人もいましたけど、そんなんじゃない。僕自身、ロッテのユニフォームを着て、グラウンドに立って、ファンの方に声援してもらってる、その意味を感じにくくなっていたんです。自分を見失って、打席に立つのが怖かった。自分って弱い人間だと、初めて感じました」

 200本を打つ1年前のことだ。ヒーローインタビューを受けた西岡は、監督解任反対、フロント批判の横断幕を出した一部のファンに対し、『大人になったらこういうところでプレーをしたいと頑張っている子どもたちの夢を崩さないで』『本当にロッテを愛しているんなら、明日から横断幕を下げてほしい』と、お立ち台を降りて、直接、呼び掛けた。

【次ページ】 飲み屋から心配されるほど酒を控えた今シーズン。

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西岡剛
マット・マートン

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