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錦織圭が陥った、心技体の悪循環。
~ウィンブルドン3回戦敗退の原因~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2013/07/15 08:00

棄権者が続出した今大会で錦織本人も「リタイアを考えた」と苦しい胸のうちを明かした。

棄権者が続出した今大会で錦織本人も「リタイアを考えた」と苦しい胸のうちを明かした。

 ウィンブルドンで錦織圭は3回戦敗退に終わった。四大大会では自己最高の第12シードがついたが、第23シードのセッピに逆転で敗れた。

 敗因の一つはフォアのストロークの不調だろう。1、2回戦の錦織は低い姿勢で忍者のように打点に入り、足裏で芝をしっかり踏みしめてラケットを振った。地面から力をもらう、理想的な打球フォームだった。ところが3回戦では腰高な姿勢が目立った。ラケットですくい上げるだけで、ボールを押し込めない。手打ちのショットは不安定で、ミスが増えた。最大の武器であるフォアがこの試合では弱点となり、そこを相手につかれた。

 なぜ、これほどフォアが崩れたのか。原因はおそらく二つ、フィジカル面とメンタル面にある。

 第4セット終了後に腰の治療を受けた。試合後の会見では、古傷の左ひざと右足首の状態も思わしくなく、前日は練習をせず休養に充てたことを明らかにした。

「全体的な疲れもあった。腰が浮いてきたのは理解していたが、直せなかった」と錦織。低い姿勢を作ろうにも、体が言うことを聞かなかったのだ。

体が言うことを聞かずナーバスになり、フォアの絶不調を招いた。

 芝は足が滑りやすく、バウンドも低いため、普段と違う体の使い方が要求される。弱い部位にその負荷がかかったのだろう。小兵の悲しさとも言える。父親の清志さんの言葉を借りれば、頭のてっぺんから爪の先まで使ってポイントを奪うテニス。まだ3回戦とはいえ、1ポイントに費やす労力の大きさが徐々に体を痛めつけていったに違いない。

 それにしても、精神的な粘りのなさは彼らしくなかった。いつになくナーバスで、ミスにいらつく姿もあった。理由を聞いても「後半は思うようにボールも入らなかったので」と歯切れが悪かった。後日、錦織はブログで緊張していたことを明かした。勝ちたい。負けられない。緊張の理由は「100こぐらい」思いつくという。緊張の中で疲れのたまった体を操るのは容易ではない。体が言うことを聞かないから余計ナーバスになる。心技体が悪循環に陥り、フォアの絶不調を招いた、と見るべきだろう。

 根本的な原因はフィジカル面にある。ガラスの肉体をいかに頑健なものにしていくか。以前から指摘されてきた課題があらためて浮き彫りになった。

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