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大迫勇也と柴崎岳が描く成長曲線。
鹿島が誇る逸材が代表に君臨する日。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byToshiya Kondo
posted2012/12/08 08:01
22歳の大迫(写真左)と20歳の柴崎。2人とも、ほぼ全試合に近い出場でシーズンを通して活躍。2連覇となったナビスコ杯では、昨年は大迫が、今年は柴崎がMVPを獲得した。
J1最終節の鹿島アントラーズvs.柏レイソル、試合後の記者会見で鹿島の指揮官ジョルジーニョ監督は、サポーターへの感謝、そして志半ばでチームを去らなければならない無念さを、寂しげな表情で何度も口にした。しかしその途中、この日2得点を記録した大迫勇也についての意見を求められると、彼は表情を変えてこう断言した。
「まず、皆さんがもっと強調してもいいと思うのは、彼が将来、日本代表のセンターFWになるということ。それは間違いないことです」
その理由をいくつか連ねた後で、こう続ける。
「今のアントラーズには、おそらく2人、(将来的に)日本代表に君臨する選手がいます」
2人とはもちろん、大迫勇也と柴崎岳である。
ジョルジーニョがメディアに対して「もっと強調してもいい」と言ったからではないが、確かに今の2人には、「近い将来の日本代表を担う選手である」と断言したくなるほどの魅力がある。個人的にはむしろ、もし「日本代表を担う」タイミングが“今”であっても早すぎることはないとさえ思う。
ロンドン五輪代表から落選後、聞こえ始めた「大迫“確変”」の声。
日頃から鹿島を中心に取材しているわけではないから、そのきっかけがいつ、どういう形で訪れたのかは分からない。しかし今季の大迫が、ロンドン五輪メンバーからの“落選後”に目に見えて大きな変化を遂げたのは明らかだった。
ロンドン五輪に臨む最終メンバー18名が発表されたのは7月2日。しかしそのリストに、大迫の名前はなかった。
「間違った選択」
この決定を受けて、ジョルジーニョは“親友”である五輪代表の関塚隆監督を迷わず批判した。コメントを求められた大迫は「五輪のことは忘れた」「僕はここで頑張るしかない」と落胆の色を隠せなかったが、しかしその後のピッチで見せたパフォーマンスからネガティブなオーラは感じられなかった。
リーグ戦に関して言えば、それまでの16試合では15試合に出場して3得点。以降の18試合では17試合に出場して6得点。飛躍的に増えたアシスト数も含めて考えれば、その変化は明らかだった。「大迫が“確変”した」という言葉は、次第にあちこちから聞こえ始めた。
それでもまだ疑いの目を向けざるを得なかったことには、理由がある。