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若武者は吉井コーチの薫陶を胸に。
日本ハム・中村勝の「終わりなき旅」。 

text by

加藤弘士

加藤弘士Hiroshi Kato

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photograph byNaoya Sanuki

posted2012/11/09 11:15

若武者は吉井コーチの薫陶を胸に。日本ハム・中村勝の「終わりなき旅」。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

中村は今季、レギュラーシーズン8試合に登板。2勝2敗ながら、防御率1.79と抜群の安定感を誇った。日本シリーズ第4戦では、ポストシーズン初登板とは思えない落ち着きを見せ、7回無失点と好投した。

 日本ハムの3年目右腕・中村勝はミスターチルドレンの音楽をこよなく愛する。

 今年38歳になるわたしは、若い野球選手と音楽の話をしてもかみ合わないことが多くなったが、ミスチル好きとなれば、話は別だ。中村勝は'91年生まれだが、「抱きしめたい」「クロスロード」「イノセントワールド」といった前期の曲も携帯型音楽プレーヤーに入れて、聴いていると話してくれた。名曲は時空を超えるのだな、とあらためて思った。

 10月31日、札幌ドーム。日本シリーズ第4戦。わずかな「異変」に気づいたファンは、どれだけいたのだろうか。

 大舞台のマウンドへと向かう中村勝のBGMが、いつもの「HERO」ではなく「終わりなき旅」に変わっていた。'98年秋にリリースされた「終わりなき旅」はミスチルの数多いナンバーの中でも、屈指の名曲として知られる。挑み続けようとする者どもへと捧げられる歌詞は強靱で、壮大なメロディーとともに、大きく背中を押してくれる。

「もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅」

 桜井和寿のそんな言葉を胸に、背番号36はジャイアンツの強力打線に対峙した。

「マウンドでの精神状態が素晴らしい」と吉井投手コーチ。

 さらに試合前、吉井理人投手コーチからの激励は、自然と闘志がほとばしるものだった。

「好きに暴れてこい。日本シリーズを、荒らしてきたれ!」

 ストレートの最速は139キロ。だが微妙に動く。球速表示以上にボールには伸び、キレがあった。スライダー全盛の現在、カーブを操れる投手は希少で、打者も慣れていない。同じ腕の振りから繰り出される100キロ台前半のカーブは有効で、緩急により幻惑し、凡打の山が築かれていった。四球ゼロと制球力にも狂いは見られない。寡黙な男が、拳を握り、吠えた。レギュラーシーズン2勝2敗のピッチャーとは思えない、威風堂々のピッチングだった。

 中村勝という投手を吉井コーチはこう評する。

「ブルペンでは『これがプロ野球選手なのかな?』というような球を投げているんだけど、ゲームにいけば変わる子。マウンドでの精神状態が素晴らしい。それに尽きます」

 ジャイアンツの先発は学年こそ1つ下だが、同じ20歳の宮國椋丞だった。ともに未来の球界を牽引することが期待されるエース候補だ。登板前日、中村はこう話していた。

「ファームでよく投げ合ったりしていました。まとまっていて、変化球でも真っすぐでも勝負できる投手。年下には見えない」

【次ページ】 シャイな男が明らかに興奮しているのが分かった。

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