SCORE CARDBACK NUMBER

ネバダ審判団の矜持と
パッキャオの王座陥落。
~フィリピンの英雄に見えた変化~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byMarsh Starks/BOXING BEAT

posted2012/06/24 08:00

ネバダ審判団の矜持とパッキャオの王座陥落。~フィリピンの英雄に見えた変化~<Number Web> photograph by Marsh Starks/BOXING BEAT

判定で敗れたパッキャオ。9Rまでリードも、残り3Rでスタミナ切れからか逆転を喫した。

 マニー・パッキャオが負けた。6月9日のWBO世界ウェルター級タイトルマッチで、不敗のティモシー・ブラッドリーに喫した7年ぶりの敗北。6階級で世界王座を獲得してきたフィリピンの英雄がタイトルを失ったのは、13年前に減量苦からフライ級で惨敗して以来の椿事である。

 パッキャオにしては珍しくヤマ場を作れない試合だったが、内容そのものは接戦で、2-1の判定が論議を呼んでいる。両者とも自らの勝利を主張し、パッキャオは「100%私が勝った」とまで言い切っている。通常どちらが勝ったか分からない試合では主催者側選手の手が上がることが多いが、ネバダの審判は時々こういう逆の判定を出して驚かせる。デラホーヤが初めて黒星を喫したトリニダード戦や、宿敵モズリーとの第2戦でも、接戦で相手側の勝ちとされた。それに激しい言葉でクレームをつけたのは、今回と同じボブ・アラムプロモーターだった。

ベルト以外に守るべきものが多い“国会議員ボクサー”パッキャオ。

 露骨な不当判定とは一線を画したい。試合そのものが賭けの対象になっているラスベガスで仕事をする審判は、世界中で最も高い審判技術を持つ人たちだ。注目を集める大試合をどこの誰よりも多く経験し、常に厳しい目にさらされている。「試合を見た誰もがパッキャオの勝ちと見た。2人のジャッジ以外は……」と書いたフィリピン紙もあったが、ブラッドリーの勝ちとした2人はともに世界戦を何度も担当してきたベテランなのだ。

 ボクシングの判定論議は永遠のテーマ。特にラウンド毎に優勢者にポイントを振り分ける現行の採点方法では、「10-10」とつけたい互角の回でもあえてどちらかの勝ちと採点しなくてはならないため、今回のように実際の印象と異なる判定が出ることも避けられない。

 それはそれとして、これまで何度も衝撃KOで驚かせた“パックマン”パッキャオも、前戦のフアン・マヌエル・マルケス戦(2-0判定勝ち)に続き技巧派に苦戦した。勝ったブラッドリーを褒めるべきだが、パックマンの売り物の的確さと踏み込みの鋭さも、この日は物足りなかった。以前と比べ試合運びが慎重なのはベルト以外に守らなくてはならないものが多いためか。国民的英雄となったパックマンは国会議員でもあり、フルタイムのボクサーではないのである。

関連コラム

関連キーワード
マニー・パッキャオ
ティモシー・ブラッドリー

ページトップ