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タジク戦で「持っている」FWに変身!
大量得点で証明された“マイク効果”。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2011/10/12 11:40

タジク戦で「持っている」FWに変身!大量得点で証明された“マイク効果”。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

君が代を聞いて「鳥肌が立った」というハーフナー・マイク。広島で生まれ、札幌と横浜で育ったマイクは「これまでは、成功というよりも挫折の方が多いくらいだった。ようやくここまで来れた。青い代表のユニホームを着てプレーできることは誇らしいので、これを続けていきたい」と語った

“マイク効果”で面白いように得点し続けた日本代表。

 相手はボールホルダーに対するプレスをかけられず、フリーの状態でクロスが上がればマイクの空中戦の強さが活きる。

 そして前半11分、右サイドに出た中村のパスを受けた駒野友一からのクロスを、マイクが高い打点で合わせて先制点を奪った。「1回引いて、飛び込むスペースをつくった」とマイク自身も工夫していた。

 チーム2点目となった岡崎のゴールも、マイクは中村のパスを受けにいこうと前に出て相手DFの注意を引きつけて岡崎のスペースをつくっている。マイクの存在は、明らかにタジキスタン守備陣にストレスを与えていた。前半19分のこのゴールは、結果としてタジキスタンの意欲を大きく削り取ることになった。

 この日、トップ下でほとんどの得点に絡んだ中村は“マイク効果”をこう口にする。

「マイクを中に入れてしまうとやられるという思いが相手にあったのか、(相手が下がって)バイタルのところが空いたのは大きかった。それだけじゃなくて、相手がしっかり(マイクに)ついていったところで、マイクはクロスをそのまま決めてしまうことができる。たとえこぼれたとしても、そこを周りが拾っていければいい」

 マイクの高さを相手にしっかり意識させると、今度はパスをつないで“地上戦”を仕掛けようとする。マイクの存在をうまく活用することでゴールを量産していった。

「相手が引いてくれたので、自分としてはボールを受ける動きよりも、ゴールの近くにいて仕事をしようと意識していた。ホントにいいボールが来るので僕としては合わせるだけでした。いいボールが来るから、決めることができた」

 後半開始早々にも駒野のクロスに合わせて2点目を挙げたマイクは、そう言って周りの“お膳立て”に感謝するばかりだった。

中村憲剛は、常に前線にいる3人の動きに注意を払っていた。

 新しい戦力という点では、“復帰組”中村の働きも大きかったと言える。

 中村は前線にいる3人の動きに常に注意を払っていた。

 バイタルエリアに入ると、特に岡崎、香川がスピードに乗ったタイミングで決定的なパスを何度も繰り出した。香川が「憲剛さんのようなパサーがいると僕らも活きる」と言えば、岡崎も「憲剛さんに渡って、走っておけば必ずチャンスになった」と絶大の信頼を口にしたほど。相手のプレッシャーがなかったとはいえ、本田不在のトップ下を任せられる適役であることをこの試合でしっかりと証明できたと言える。

 また、この日の収穫は新戦力ばかりではない。サイドを攻略してゴールを量産しながらも、決して攻め急ぐことはなかった。一方のサイドで詰まってしまえばフリー状態のボランチにボールを戻したうえで、逆サイドに振って冷静に揺さぶりをかけていった。その中心となる遠藤保仁の存在感はやはり際立っていた。加えて、左サイドを蹂躙した長友佑都のハイパフォーマンスも同様に記しておきたいと思う。

【次ページ】 「逆に気を引き締めていかなければまずいかなと思う」

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