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「3-4-3」システムの思わぬ効用。
ザックジャパン、韓国に歴史的大勝。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNaoya Sanuki
posted2011/08/11 11:50
後半10分には、パスを受けた清武が、それをグラウンダーのクロスでゴール前へ返したところを右足でシュートし、2点目を決めた香川真司。この日は、2得点以外のシーンでもたびたび得点機を作って日本代表の10番のイメージを印象づけた
「組織でも個でもウチのほうが勝っていた」(長谷部)
チームの心臓として献身的な働きを見せたキャプテンの長谷部誠は、この先制点が大きかったと言う。
「前半、真司が先制点を取って、自分たちのゲームにすることができた。あらためて先制点の重要性というのを感じました。ウチは組織で闘えたし、周りを使いながらいいテンポでボールを回す、そういうゲームができた。組織でも個でもウチのチームのほうが勝っていたように思います」
香川の先制点が勢いをもたらし、香川、本田、李、途中交代で入ってきた清武弘嗣の前線を中心にスピーディーな攻撃を展開していく。その結果、後半10分までに2点を追加した。自分たちの時間帯に引き戻し、「日本の時間帯」のなかで得点を確実に奪っておく。実力の拮抗した相手に、したたかに勝ちきってみせた。そのしたたかさが、何よりの収穫だった。
「3-4-3」システムの効果が、思わぬところで発揮された。
そしてこの日の勝利でもう一つ、目を引いたのが「3-4-3」効果である。
ザッケローニは先のキリンカップの2試合を3-4-3の成熟に充てたが、韓国戦では慣れている4-2-3-1に戻した。「3-4-3はあくまでオプション」と言ってきただけに、W杯アジア予選の前に通常のシステムに戻すことはいわば規定路線であった。ただ、サイドで優位に戦うことを重視した3-4-3に対する取り組みは、4-2-3-1に戻してもうまく反映されていたように思う。
サイドで数的優位をつくる意識がチーム全体に強く、ボールを奪えば特に右サイドバックの内田が駆け上がってチャンスをつくるシーンが多かった。右サイドで内田と好連係を見せた岡崎は、効果を口にする。
「3-4-3をやってきて、サイドバックの上げ方がチームでスムーズにできてきたというのはあると思う。自分がどう中に入っていけば、サイドバックが上がれるかとか、そのあたりはよくなってきている」
サイドを制することで中央も活きる。
長谷部は語る。
「練習でもボランチが下がって、サイドバックが上がるやり方はやっていましたし、意識していた。サイドを使っていくと、今度は中央が空いてくる。そういった意味では、サイド、中央どちらからでも攻められるというのは強みだと思う」
中央の本田を軸としたパスワークが韓国の守備網をズタズタにした。3-4-3をやってきたからこそのバージョンアップ。これも先を見据えてチームづくりを進めるザッケローニの計算によるものなのだろう。