総合格闘技への誘いBACK NUMBER

厳しき環境なれど…。青木真也 

text by

石塚隆

石塚隆Takashi Ishizuka

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photograph bySusumu Nagao

posted2007/07/10 00:00

厳しき環境なれど…。青木真也<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 このところ総合格闘技を取り巻く環境がすっかり寂しいものになってしまっている。

 もちろん、毎週のようにどこかで総合格闘技の大会は行われているが、残念ながら多くの衆目を惹きつけるような力をもっているわけではない。

 日本のメジャーとして唯一『HERO'S』は定期的に機能しているものの、そう簡単にキラーカードを組めるわけでもなく、ファンにしてみれば、いささか迫力不足の大会がつづいている。

 さらに、UFCと同一オーナーとなった『PRIDE』は、体制と方針が未だはっきりとせず、いつ再開されるのか分からないままだ。秋には大会が行われるという話だが、そうこうしている間に、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラやダン・ヘンダーソンといった有名選手たちは『UFC』へ、近藤有己は7月14日に『boodog

FIGHT』に出場するなど選手の流出が相次いでいる。

 選手たちは戦う舞台がなければ輝くことはできず、さらに死活問題になるわけだから、当然このような事態になってしまうのは分かっていたことでもある。

 しかしながら、PRIDEの再開を願い、この厳しい時間を淡々と過ごしている選手も少なくはない。

 例えば稀代の寝技師・青木真也がそうだろう。本人が苦しかった時期、PRIDEにサポートしてもらった義理を感じていると発言し、他のリングに上がる場合にもPRIDEの意向に沿うカタチで実現している。とはいえ、青木もPRIDE.34が行われた4月以来、グラップルの大会には出場したが総合の試合からは離れてしまっているのが現状だ。

 この状況、選手の心理として何を思うのか。現場に近い選手だからファンよりも大会開催などの情報が入り易いかといえば、そうでもないと青木は言う。

 「正直、僕らが情報に踊らされているほうですよ。どうなっているんだって。この状況はまるで無期懲役みたいな感じです(笑)」

 以前の青木は試合数の多い選手だった。総合、柔術、グラップルと年間7〜8回の試合を平気でこなしていた時期がある。

 「だから試合はしたいですよね。目標があったほうが、もちろん練習にしまりが出ますから。けどグラップリングじゃなくて、僕は総合の試合がしたい。不思議なもので総合の試合は、やればやるほど強くなっていく実感があるんですよ。練習では出せないモノが出せて、練習では得られないモノが得られる」

 強くなっている実感のある今だからこそ試合がしたい。まだ選手として成長期にある青木にとって、この現状はいささか辛いものがあるにちがいない。

 「まあけど、それもPRIDE次第ですから」

 達観したように青木はそう言った。

 では、この先行き分からない状況で、どうやってモチベーションを維持しているのだろうか。

 「なんだろ?うーん、格闘技はひとりじゃできないですからね。仲間がいるから頑張れるわけで、これがもし一人だったら気持ちを維持することはできないでしょうね」

 そういえば五味隆典も、自身のジムを開き後進を指導することでファイターとしてのモチベーションを保っていると聞く。個人競技とはいえ、苦楽を共にする仲間の存在は選手にとって非常に大きいモノなのである。孤独だからこその連帯感。

 「まあ、その仲間も試合がなくて困っているんですけどね」

 苦笑する青木は、さらにこうつづけた。

 「(格闘技は)プロとして一番ワリに合わない職業だと思いますよ」

 日本総合格闘技界の曲がり角。いち早く彼らの才能を生かす場所の提供を──。

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