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疾風レーシングの躍進は、
エンジニアの意地の賜物。
~カワサキ撤退の副産物~ 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

PROFILE

photograph bySatoshi Endo

posted2009/06/17 06:00

 モトGPクラスに参戦するチームとWGPを運営統括するドルナとの間には、参加する見返りとしてテレビ放映権料の分配金などを受け取る契約が存在する。今年の1月、契約期間内だったカワサキが撤退を決めた。もちろんドルナへの損害賠償は織り込み済みだったが、台数を減らしたくないドルナは損害賠償の手段としてカワサキに参戦を求めた。

 損害賠償としての参戦となれば、カワサキの名前は使えない。レース活動にかかわるすべての費用が損金扱いとなるために、一切PRが行なえないという制約も生まれた。プレスリリースも出せないチーム。レースファンにとってはカワサキのチームなのだが、カワサキとは関係のない形で、疾風(ハヤテ)レーシングが誕生した。

カワサキの技術者が遺した最新鋭の“形見”。

 その疾風レーシングのM・メランドリが、第4戦フランスGPで2位になった。開幕戦カタールGPではコースアウトのために14位だったが、今年の活躍を期待させる走りだった。それを証明したのが第2戦日本GPの6位。第3戦スペインGPでは5位と着実にリザルトを上げた。そして第4戦フランスGPでは、ウエットからドライへとコンディションが変わる難しいレースで見事表彰台に立ち、メランドリはもちろんのこと、疾風レーシングのスタッフも大喜びだった。

 カワサキが撤退を発表したのは今年の1月。モトGPグループの解散も3月と決まった。4月以降はパーツを供給するだけとなるため、その間、カワサキのモトGPグループは、疾風レーシングにマシンを引き渡すためのテストを続けた。好リザルトは望めないが実績ある'08年型か、それとも'08年型の改良型で可能性ある'09年型か……。目標達成半ばにして撤退を余儀なくされたカワサキのモトGPグループの最終決断は、'09年型だった。

メランドリの活躍がカワサキの名誉を守る。

 現在のモトGPクラスは、厳しい燃費規制と様々な制約の中で、ニューパーツの投入で大きなアドバンテージを築くことは難しい。その代わり、熟成を重ねる根気強い作業が求められる。当然、素性の良さも必要とされるが、メランドリの活躍は、'09年型のポテンシャルの高さを証明することになった。

 関係者にとって「青天の霹靂だった」カワサキの撤退。表彰台をもっとも喜んでいるのは、解散していったカワサキのモトGP開発陣ではないだろうか。

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