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モトGPのライダーが
コーナーで足を出す理由。 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2009/08/06 06:00

モトGPのライダーがコーナーで足を出す理由。<Number Web> photograph by Satoshi Endo

多くのライダーが試行錯誤するなか、元祖のロッシは効果的に「足出し」を駆使している

 今季のモトGPクラスでは、ブレーキング時にモトクロスやダートトラックのように足を出すというテクニックが流行っている。それを最初にやり始めたのはV・ロッシで、いまではトップライダーのほとんどが足を出すようになった。レース中、トップグループがブレーキングを開始すると、一列に並ぶ選手たちが同時に足を出すシーンは実に奇妙で、その映像はTVや雑誌でも頻繁に取り上げられている。

 しかし、足を出す理由について明確に答えてくれる選手はいない。元祖であるロッシは「いまのブーツは、底のラバーのグリップが良すぎるのでステップワークするのに足を外さなくてはいけない」と答えているが、そんなことが理由であるはずはない。もっとも、メリットがあるからこそ、そのテクニックをわざわざ公開するはずはないのだけれど。

足出し走法で安定感が増したロッシ。

 選手たちが足を出すのは、ロングストレートからのハードブレーキング時がもっとも多い。元々ブレーキングに定評のあるロッシは、この足出し走法をするようになってから一段とコーナー進入の鋭さと安定感が増した。写真は開幕前のマレーシアテストのものだが、このときロッシは、この走法を自分の技にしようと熱心にテストを行なっていた。バイクは右足でリアブレーキを操作するために、最初は左コーナーで左足を出すだけだったが、シーズンが始まってからは右コーナーで右足を出すようにもなった。

 足を出す効用として考えられるのは、ステップから足を外すことで体重がシートにかかり、リアの加重が増えること。このためブレーキングで突っ込み過ぎた場合に、リアに加重を少しでも移すことでフロントの不安定さを軽減できるようになる。ロッシはそれをひとつの技として取り入れたのではないだろうか。

足出し走行は後世に残る革新的な技術だ。

 バイクレースの歴史の中で起こったライディングの一番大きな変化は、'70年代後半から'80年代にかけて活躍したK・ロバーツが、バイクから体を落としながら膝を擦る「ハングオン」スタイルを生み出したことだ。ロッシの足出し走法は、ハングオンほど革新的ではないが、新しい流れを生み出したことは間違いない。

 ロッシはすでに記録と記憶に残る名選手だが、ライディングでも後世に引き継がれる技を生み出したのかも知れない。

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