SCORE CARDBACK NUMBER

「自分の居場所」で金メダル。鈴木桂治の戦いの場は。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

PROFILE

posted2005/09/29 00:00

 エジプトのカイロで行われていた柔道の世界選手権で、鈴木桂治(平成管財)がまた金メダルを獲得した。'03年世界選手権(大阪)で男子無差別級を制覇。昨年のアテネ五輪では同100kg超級で優勝。そして今回は100kg級で金メダルを獲得し、男子では史上初の3階級制覇を達成した。柔道はもちろん、ボクシングやレスリングなど階級制競技の場合、複数階級を制した選手の大半は軽いクラスから重いクラスに上げていくのが普通で、鈴木のように重い方から軽い方に下げての3階級制覇は極めて珍しい。

 鈴木はもともと100kg級の選手だったが、同級にはもう1人のエース、井上康生(綜合警備保障)がいた。'00年シドニー五輪の代表選考会ではその井上に1本負け。'03年世界選手権の選考会では井上に勝ったが、強化委員会は井上を代表に選出。鈴木は無差別級に回された。そして昨年のアテネ五輪でも選考会で井上と戦う前に準決勝で敗れ、代表は100kg超級となった。だからこそ今回優勝した直後には「これで気が済みました」という言葉が真っ先に口をついて出た。自らの専門外の階級ではなく、「自分の居場所」である100kg級で手にした今回のメダルこそが、鈴木にとっては正真正銘、本当の金メダルだったのである。

 回り道の末、ついに悲願を達成した鈴木だが今後はちょっと複雑だ。自身は「まだ100kg級でやる」と話したが、普段の体重は110kg前後あることを考えると、1つ上の100kg超級に専念する可能性が高い。どちらでも大差ないように思われるのだが、パワーが中心の超級とスピード感あふれる以下級では柔道がまったく異なる。今大会でも鈴木は初めのうち何度か相手にポイントを取られる場面があったが、これは超級の試合に慣れてしまい、あまり動かず受け身に回ってしまったためだ。体は減量に耐えられても、柔道の質までその都度変えるのは難しい。そう考えると鈴木の戦う場は超級しかないようにも思える。

 ライバルの井上は一足早くアテネ五輪後に100kg超級に上げた。今後、鈴木も同級に専念すれば、大会のたびに井上対鈴木の名勝負が見られるようになる。本人たちにとってもファンにとっても、それが一番いい選択だろう。

ページトップ