この冬は内外で例年になく多くのボクシング関係者の訃報が相次いだ。中でも驚いたのは、タフで死にそうもなかったホセ・トーレスが心不全で急逝したことだ。享年72。元世界ライトヘビー級王者にしてプエルトリコの英雄だった。
6月にニューヨークのボクシング殿堂博物館に行けば、必ずこの人と会えた。気さくで、いつも冗談を言って笑わせる元チャンプの一番の財産は、ニューヨークの作家たちに多くの知己を得ていたことである。とくにノーマン・メイラーとピート・ハミルというボクシング好きの作家が彼の文章指導の先生だった。
作家・宮本美智子さんの『マイ・ニューヨーク・フレンズ』によると、トーレスの才能を最初に見込んで文章の手ほどきをしたのは、親友のハミルだった。メイラーには、英文の個人レッスンを受ける代償に、スパーリングの相手をさせられた。こういうことがなければ、邦訳もされ評判となったアリやタイソンの伝記も世に出ることはなかったろう。
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