バリバリの気鋭ではない、お役ご免寸前の長老が携わる名誉職。戦術も所詮はクラブからの借り物。そこに新たな発見は少ない。最近、総じて下落の一途を辿っていた代表監督のステイタスは、しかし、ユーロ2004で見直された気がする。
ポルトガル対イングランド戦。スコラーリ監督が振るった采配は、まさにクラブ的だった。4―2―3―1でスタートした布陣は、1回目のメンバー交替で4―1―4―1に変化し、2回目では4―1―3―2へ、3回目では2―3―3―2へと、それぞれ目まぐるしく変化した。2回目では、フィーゴもバッサリ替えた。選手を駒と割り切り、豊富なアイディアをピッチに刻々と反映させ、チームを覚醒させようとする采配には、鬼気迫る凄みを感じた。名勝負の陰にスコラーリあり。
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photograph by Naoya Sanuki